2章 旅行

2-1

≪島田裕志視点≫


朝、狩場梅川中央空港に向かい、飛行機乗り場に向かう。

長崎まで約1時間くらいだろう。

手荷物検査場を抜けると国内線371番乗り場へと向かう。


「19、20・・・・・・」


陽菜が数えながら探す。

371番は国内線の中央辺りに位置する。

結構これが遠いんだ。

大体、駅の改札から3kmとかどんだけでかいんだよこの空港。

飛行機に乗ると、41番−Bを探す。

探すと言っても一番うしろ。

探す必要性は皆無に等しい。

窓側から陽菜、俺、安城さん、水無瀬、幸雄さん、靜枝さんの順だ。

座席に座ると俺はスマホを出して機内モードにする。

隣の安城さんも同様に機内モードにしていた。

空港から出発し、上空1万メートルに到達する。

安城さんが机に突っ伏していた。

チーンという効果音が今にも聞こえてきそうだよ。

飛行機酔いしたんだ。

俺はならないけど確か陽菜も・・・・・・。

俺が反対の隣を見ると陽菜も安城さん同様に突っ伏していた。

二人だけではなかった。

靜枝さんと幸雄さんも酔っていた。

飛行機苦手勢多くね?

残ったのは俺と水無瀬。

水無瀬と目が合うと、駄目だこりゃと言うように首を振る。


「水無瀬は大丈夫なのか?」

「わたくしは大丈夫だよ。他の人はダメというよりアウトだよね、これは」

「確かにね」


水無瀬の言う通り。ダメではなくアウトに分類される。

どっちが重症かと言うともちろんアウト。

長崎に着くと全員をベンチに座らせて、落ち着かせる。


「大丈夫?」

「わ、私はなんとか大丈夫です」


無理をしているのが分かるが、そこは気にしないでおく。

なるほど、これを理解していたから今日は特に何もしない予定なのか。

水無瀬は全てを理解していたのだ。

水無瀬はやれやれというように首を振ると、俺のところに来る。


「どうしよう」

「どうしようもなくない?ほっとくのが1番だと俺は思う」

「それは思った」


水無瀬は仕方なさそうに俺の隣に座る。

30分ほど経つと安城さん、幸雄さん、靜枝さん、陽菜の順で回復する。


「申し訳ないです」

「別にいいよ」


時間ロスしたわけではないからね。

暇な時間ができたと思えばいいだけだし。

長崎空港を出ると、レンタカーを靜枝さんが借りてくる。

現在時刻は11時過ぎ。

ちょっと早めの昼食を取ろうということで向かう。

ゴールデンウィークということもあり、観光客がたくさんいる。

まぁその中の1人なんですけど、俺も。

昼食を済ませると、ホテルに向かい、チェックインを済ませて部屋に向かう。

ここは狩場や梅川と違って空気もいい。

向かった先は1403号室。

俺と陽菜で使う。

安城さんと靜枝さんが1402号室、水無瀬と幸雄さんが1401号室だ。

部屋は15畳位あり、ベッドは2つ。

俺と陽菜は荷物を置くと、安城さんの部屋に行く。

ちょうど水無瀬たちも出てきてた。


「この後どうするの?」

「さぁ。安城さんが決めてるんじゃないんですかね」


安城さんの部屋に入ると、安城さんが椅子に座って考えていた。


「あ、皆さんお揃いですか」

「安城さん、この後どうするの?」

「特に考えてませんよ」

「ホテルでいい気がする」

「でしたら私は一度お風呂に入らせていただきます」

「じゃぁ俺は部屋に帰ろう」

「僕もそうしよう」


俺と幸雄さんは部屋に戻る。

俺は部屋に戻ると荷物の整理、それと部屋の物のチェックをする。

しばらくして陽菜が戻ってくる。


「ただいま〜」

「おかえり」


陽菜は帰ってくるとすぐにベッドに横になる。

あ、これは後で起こすのが面倒くさくなるやつ。

まぁ疲れていたからいいとしよう。



しばらく寝かしておくと、部屋の扉がノックされる。

扉を開けると、安城さんと水無瀬。


「どうしたの」

「いえ、そろそろお食事ですよとお伝えに来ました」

「あ、ありがとう」


はぁ、結果的に起こす羽目になるじゃん。

俺はベッドに近寄る。


「陽菜、夕食だよ」


案の定、反応がない。

安城さんに助けを呼ぶべく、俺は安城さんの部屋に行く。


「安城さん、1つお願いできる?」

「何でしょう?」

「陽菜を起こして」


安城さんは間を少し開けてから分かりました、と言う。

その時、水無瀬が来た。


「お兄ちゃん起こすの手伝って」

「いいよ。それは俺がやる」

「水無瀬さん、姉を起こしておいて下さい」

「いいよ」


半数の人が寝てるのかよ。

俺が幸雄さんを起こすと、他の人達も起きる。

夕食会場に向かうと、和室の個室に案内される。


「夕食は和食なんですね」

「そうだね。確か水無瀬が好きだったような・・・・・・」

「好きだよ」

「陽菜も好きだよ〜」

「知ってた気がする」


曖昧な言い方でごまかす。

正直言って覚えていない。

覚えていないならしょうがないよな。

俺は正座して座布団に座る。

幸雄さん以外正座をしていて幸雄さんが普通に目立つ。


「え・・・・・・なんでみんな正座してるの・・・・・・?」

「マナー・・・・・・ですかね」


安城さんが当然と言うように答える。

残念ながら妥当。

これは全世界共通なのだ。



夕食が終わると大浴場に1人で行き、帰ってくる。

陽菜と水無瀬と安城さんが一緒に行ったそうだ。

俺は陽菜が帰ってくるまで勉強することにする。

陽菜が帰ってくると、全員が謎に俺の部屋に集まる。


「どうしたの?」

「いや、僕が提案したけど、怖い話でもしようかなって」


どうやら怖い話をするらしい。

俺は比較的大丈夫な方だけど、マジで恐怖を感じると無理かもしれない。

水無瀬が電気を消して、カーテンを閉める。

月光が差し幸雄さんの顔を照らす。


「じゃぁ僕から行くよ」

「オッケー」

「行きます。ある日、ある少女が山の中に居ました。そして山小屋にはいっていったのです。

 そしたら二度と出てくることはありませんでした・・・・・・。あぁぁぁ怖い」


・・・・・・。

ある意味怖いかもしれない。

誰も反応しないから。

その後、水無瀬、靜枝さん、陽菜、俺と言ったが誰も怖がる気配はなかった。


「最後は私ですね。」


そう言って安城さんは話し始めた。




≪To The Next Story...≫

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