1-11


安城さんは電話をかけながら6号車で止まる。

安城さんが俺と少し離れた位置で電話をする。


「はい・・・・・・ありがとうございます」


一体誰に電話を?


「島田くん、石川さんに頼んでJR狩場梅川中央空港駅の封鎖をお願いしました。

この名刺は石川さんのです。

これをうまく利用したいので、うまく話を合わせて下さい」

「お・・・・・・おう」


なるほど、そういうことなのか。

降りると臨時閉鎖、と言う形で改札は通れなくなっていた。

というか、こんなにやる必要あるのか?

安城さんが石川さんと連絡を取ると、東口だろうと帰ってきたらしい。

東口に着き、駅員と話をする。


「私は石川さんの代理できました安城といいます」

「確かに石川さんの名刺を確認しました」

「1人1人確認しながら通していただけませんか?」

「分かりました」


≪おまたせしました、駅員が確認いたしますので、こちらを通って下さい≫


そう言うと、順に人が出ていく。

1人1人確認しながら通していっている。

こんな光景はめったに無い。

俺と安城さんは隠れて待つ。

内条さんの姿を捉えると、追跡する。

内条さんは余裕の表情で飛行機乗り場に向かう。


【19番乗り場、アメリカ・ニューヨーク行き No.19 For N.Y.C.】


と書かれた場所に着くと席に座る。


「島田くん、私が横から捕まえるので、逃げたら追跡お願いします」

「分かった。任せろ」


安城さんがスマホを仕舞うとしれっと内条さんの席の隣に座る。

安城さんは内条さんの手をしれっと掴むと、微笑む。


「な、なんであんたがここに!?」


内条さんが懐からナイフを出して振り回す。


「痛っ」


安城さんが腕をおさえる。

内条さんはそのまま逃走する。

俺の出番か!?

一体どうすれば!?

俺は思考を放棄してひらめく。

こうなったらやってやる!

必殺!!!!!

柱の隙間から足を出して転ばせる。

小学生でも出来ます☆

俺がナイフを弾き飛ばし、動きを抑える。


「クソが!離せよ!」


内条さんが抵抗する。

安城さんは左の二の腕から血を流しながら歩いてくる。


「12時34分確保と」


安城さんが手帳に書く。

その瞬間、内条さんが俺の手を振り払いナイフを持ち直す。

ヤバッ。

つい油断して力を抜いちまった!

戦犯確定演出だなこりゃ。


「安城、お前だけは許さない」

「私を殺したいなら一思いに殺しなさい」

「え、安城さん?」


内条さんがナイフを持ち直すと、安城さんに飛びかかる。

安城さん!?

安城さんはかろうじて交わしたものの、頬に傷ができた。

おぉ!!すげぇ。

内条さんが体を翻すと安城さんに向かって突進する。


「ヤバっ」

「死ねやぁ」


安城さん!?

俺が飛び出そうとした瞬間、肩を掴まれた。

その人はすぐに、安城さんと内条さんの間に入って内条さんの腕を掴んでいた。

間に入ってきたのは相川さんだった。


「おまえ、銃刀法違反及びに脅迫、殺人未遂の容疑で少年院送致だな」

「それと、おそらくもっと凶悪なことを裏社会でやってるはずです」

「うむ。石川からだな。ありがとう」


安城さんは一息着くと、俺のところに来る。


「捕まえてくれてありがとうございます」

「安城さんこそ腕と頬、大丈夫?」

「大したことはないです」

「一様空港の保健室に行ったほうがいいんじゃない?」

「・・・・・・分かりました」


安城さん、勇敢だね。

俺は到底こんなの無理だよ。

空港の保健室に行くと、安城さんは包帯を巻いてもらった。

学校に戻ると、思った通り質問攻めに会う。

内条は捕まえたのか、どうやったのか。

陽菜みたいだなコイツら。

アイツよりマシだけどよ。

質問に全て答えるとちまちまと下校し始める。

水無瀬が俺らが終わると同時にくる。


「お疲れ様、安城さん、腕大丈夫?」

「えぇ。石川さんにもお礼を言っとかないといけませんね。

名前を仮にも借りたわけですし」


仮だけに借りた・・・・・・?

ダジャレかな?

安城さんが電話をかける。

安城さんがしばらくして電話を切る。


「忙しいのですかね」

「また今度、わたくしはお礼がしたいから会える機会を設けてもらいたいけど」


水無瀬が安城さんに頼む。

安城さんは負けたような顔をする。


「分かりました。交渉はしてみます」

「そういえば水無瀬、あの突き落とされる動画だけど・・・・・・」

「あれね。あれはCG。あれで自白するかなって」


CGなんかい。

てっきり本物かと思っちまったじゃねぇか。

安城さんが靴に履き替える。

俺と安城さんは電車に乗り梅川中央に向かう。


「島田くん、明日からゴールデンウィーク旅行ですし、今日はうちに来ません?」

「いいけど、そしたら陽菜も着いてくるんじゃないかな」

「いいですよ、姉に連絡しておくので、準備ができ次第

新梅川市街に来て下さい。駅で待ってます」


安城さんが誘ってくれたので、俺は陽菜を連れて安城さんの家に向かうことにした。

こうなってから思うんだけど、女の子の家に行くのは本当に久々だから緊張する。


「お兄ちゃん、今日は安城さんのお家に行くの?」

「そうだよ。というわけで明日の旅行の打ち合わせ兼出発してきます」

「行ってらっしゃい。くれぐれも迷惑かけないようにね」

「分かってるよ」

「それじゃぁ陽菜、いってきま~す」


陽菜が手を上げて出発宣言する。

今日から4泊5日で長崎に行く。

長期旅行は久々だな。

何食べようかな。

長崎だろ・・・・・・。

カステラと・・・・・・あと・・・・・・。


「お兄ちゃん、前向いて歩かないと危ないよ」


おっと危ない。

石につまずくところだった。

この年齢で石につまずいたらみっともないどころか恥ずかしい。

電車に乗り、新梅川市街に向かう。

駅に着くと、安城さんが私服で待っていた。

安城さんの家につくと、水無瀬が既に居た。


「あ、水無瀬。早いね」

「近道をしてきたからね」

「そうなんだ」


近道って何だよ。

あ、でも狩場川入口かりばがわいりぐちからなら近道出来るか。

納得。

安城さんが飲み物を取って来て丁寧に配膳した。




≪To The Next Story...≫

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