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教室が静まり返り、緊張が走る。


「・・・・・・木村櫻子さん、あなたですよね」

「え・・・・・・。な、なんで私なの?」

「ご納得いただけるまでご説明いたします。

 あの日、私が突き落とされる少し前にあなたは教室を出た、違う?」

「た・・・・・・確かに出たよ。トイレに行ったんだよ」

「水無瀬探偵、それはあってます。本人がトイレに行くと言って行ったので」


俺が補足する。


「あくまで誰もついて行ってない」

「その間にあなたは私を突き落としに行った」

「でもそれはあくまであなたの推理ですよね?」

「えぇ。でもそれを裏付ける証拠があります」


水無瀬はスマホを操作して画面を見せる。

そこには水無瀬が突き落とされる一部始終が写されていた。

ていうか、これどうやって撮ったんだよ。


「な!?どうしてそんな所を・・・・・・!?」

「何故私を突き落としたのですか?」

「・・・・・・怖かったんです。美希をいじめていたのが私だとバレるのが」

「署までご同行願います」

「・・・・・・はい」


ふぅ。これで一安心。

まさか木村さんだとはね。

わざと持ちかけてきたのか。

木村さんがこの教室を出ようとした時のことだ。


「油断は禁物ですよ・・・・・・みなさん・・・・・・」


声を発したのは安城さんだった。

え、どういうこと?

安城さんはゆっくりと立ち上がる。

注目が集まる中で安城さんは手帳を開く。


「これは石川さんに聞いたのですが、本当の黒幕は別にいるんですよ」

「私が解決する、と言ったんですが・・・・・・」

「本当の黒幕は・・・・・・内条さんですよね・・・・・・?」

「えっ!?」

「私!?」


教室がざわつく。

流石にそれはないんじゃないか!?

だって普通自分で自分の首を絞めることをやらないでしょ。

内条さんの性格なら尚更。


「内条さん、私の眼は誤魔化せませんよ。

 上履きにてんとう虫が入っていたと言っていましたが、あなたは自分で入れましたよね」


私、の眼?

石川さんの眼じゃなくて?


「私、虫が苦手なのでそんな事できないです」

「そうなんですね。これはどういうことですか?」


安城さんがスマホの画面を見せる。

そこには夜、内条さんと木村さんで校舎を話しながら歩いていた。


「その日は学校に忘れ物をして、櫻子に付いてきてもらったんです。

 流石に夜の学校は怖いので」

「・・・・・・そうですか。では病院で何を話していたのですか?」

「いじめについての相談。でもまさか相談している相手がいじめをしていたなんて」

「そうですか」


安城さんはそう言うとスマホを出して電話をする。


「安城です。石川さん、最終手段とは?・・・・・・分かりました」


安城さんが電話を切ると、安城さんはスマホを操作する。

スマホから音声が聞こえてきた。


『明日は生ゴミを適当に机に詰めといて。そしてもちろん証拠隠滅するように』


内条さんの声で流れていた。

これどうやって録ったんだよ。

ていうかこのやり取り心の中だけどさっきやったぞおい。

決定的な証拠を突きつけられて内条さんが周りを伺う。

内条さんは奥歯を噛みしめると、廊下に向かって走り出す。

警察官が全員で取り押さえようとするが、

捕まらずにそのまま階段を駆け下りていった。

何やってるんだぁ!

警察官!油断しすぎだろ!?


「島田くん、少々手伝ってくれますか?」

「何を?」

「追跡です。島田くんの体力なら行けるはず」


何で俺?

考えるだけ無駄か。

安城さんが走り出すと、俺もその後ろを、クラスメイトはみんな俺の後ろを走ってきた。

俺と安城さんは内条さんを見失わないように全力で走る。

内条は時計を見ると、スピードを上げる。


「まさかとは思いますけど・・・・・・」


安城さんが考えながら走る。

駅周辺になると、人が増えてくる。

中学生が集団になって走るなんてマラソン大会じゃあるまい。

通行人は端に避けている。

そこを安城さんがお礼をいいながら走る。

内条はJR線の改札に入る。


「やっぱり」


安城さんが定期でくぐるとその後を追う。


特急とっきゅう狩場梅川中央空港かりばうめかわちゅうおうくうこう行、間もなく発車します。

 次の停車駅は狩場梅川中央空港です≫


アナウンスが聞こえてくる。

全力で階段を下る内条を横に、安城さんと俺はエスカレーターを駆け下りる。

内条さんはギリギリで駆け込み乗車をした。

俺と安城さんはと言うと、滑り込み乗車に近い形で乗車する。

初めてだよ、駆け込み乗車。

警察の人と、クラスメイトは全員乗れなかったようだ。

荒くなった呼吸を整える。

全力でこの距離はきついって。

息が整ったので俺と安城さんが1号車から順番に調べる。

いわゆる特急列車で豪華な客席が並ぶ。

その中を突っ切るように進む。

残り10分弱。

13両編成なので純粋に1号車50秒前後。

10号車まで調べ、車間に差し掛かった時のこと。


「あの〜お客様、大変失礼ですが、切符はお持ちですか?」


あ、そういえば何も考えずに乗ってたわ。

この列車。

確かにダメだよね・・・・・・。


「・・・・・・私達はこういう者でここで逃走している人を探しています」


安城さんが名刺を見せる。

見えなかった・・・・・・。

どういう手口か気になってしょうがない。

お姉さんが去っていくと、俺は尋ねる。


「名刺、もしよかったら見せてくれる」

「見せません」

「え・・・・・・なんかあるの?」

「分かりましたよ。見せます。とりあえずその前に内条さんを捕まえましょう」


俺は内条さんを捕まえるためにそして安城さんの名刺を見るために内条さんを探す。

12号車に到達し、残りは13号車。

ついに最後!!

緊迫する空気の中、安城さんとともに13号車を調べる。

しかし、内条さんの面影はなかった。

安城さんが気づいたように言う。


「お手洗い・・・・・・ですね」


そうか・・・・・・。


≪間もなく、狩場梅川中央空港、狩場梅川中央空港です。

 JR線、私鉄線、地下鉄線、各航空会社へはこちらです≫


「こうなれば最終手段ですね」


安城さん、一体何を・・・・・・。

安城さんは表情が変わり、スマホを出した。




≪To The Next Story...≫

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