1-7

陽菜と安城さんは楽しそうに雑談しながら図書館に入る。

俺は少々やることを思い出し、2人を見届けると電車で家に戻る。

パソコンを起動すると、途中まで完成しているプレゼンテーションを作る。

プレゼンテーションができたのは昼頃。

俺は安城さんにWPTで今どこかを訊く。

しばらくするとあの図書館から離れていないと連絡が来た。

図書館に行くと、安城さんと陽菜が座って本を読んでいた。

合流すると、食事に行くことになる。

近くの洋食店に入る。

食事を終えると、駅に向かう。

陽菜が安城さんの自宅に行ってみたい、といったので行くことになったのだ。


「私は姉と2人暮らしなのでそんな大したことないですよ」

「安城さんって2人暮らしなんだ」

「えぇ。家族とは正式には縁を切ってませんが一様切ったことになっています」

「なんで縁を切ったの?」

「家庭の事情です。流石に教えられません」


安城さんはなにか重大なことを隠していると俺は察した。

これはなにかの勘が働いた。

んーまぁいいか。

安城さんの家は新梅川市街から徒歩15分と言った所だろう。

一戸建てだった。


「とりあえず上がって下さい」

「お邪魔します」


安城さんが部屋に入っていく。

安城さんに案内されて和室に行く。


「綺麗・・・・・・。お兄ちゃんの部屋もこんな感じだといいのに・・・・・・」

「俺の部屋が汚いとでも・・・・・・?」

「うん。安城さんの家綺麗」


本当に悪即斬の速度で痛手を突いてくるね。

容赦ないな・・・・・・本当に。


「ありがとうございます。緑茶と紅茶、どちらにしますか?」

「俺は紅茶で。わざわざありがとう」

「陽菜は緑茶」

「分かりました」


安城さんはおそらく台所の方に歩いていった。

しばらくすると、トレイに湯呑とティーカップを合わせて3つ乗せて来た。

安城さんはそれぞれに丁寧に配ると座る。


「安城さんの家って2人なのに広いね」

「仕事というほどではないですけど定期的に収入ありますからね」

「同じ中学生、いや少し前まで小学生なのに凄いな、格が違うね」

「仕事は楽ではないですよ。責任感が大きいですからね」


安城さんが言うのに無理はない。

絶対ヤバめの仕事してるでしょ。

その後は陽菜が持ってきたというトランプで遊んだ。

3人で遊んでいると、おそらく安城さんの姉が帰ってくる。


「閑華。お客さん?」

「えぇ。混ざる?」

「いや、私は続きを描いてくる」


そう言うと階段を登っていった。


「姉の靜枝しずえです。最近新しく漫画を描いているらしいです」

「安城さんはなんかそういうハマってることあるの?」

「いや・・・・・・ないです」

「返答までに少々時間があったけど」

「ないです」


安城さんはきっぱりと言い切ると、スペードとハートの7を捨てる。

陽菜が俺の手札からダイヤのエースを持っていく。

そのままクラブのエースとダイヤのエースを捨てる


「そう言えば安城さん、この前の用事って何なの?

 ほら、水無瀬が探偵だと分かったときの」

「あれは・・・・・・何でしたっけ」

「覚えていないならしょうがないな」


気になったが残念無念。

人のプライベートに首を突っ込むつもりは全く無いんですけどね。

それはただのストーカー。

絶対にやってはいけません。

やりかけていたかもしれないけど・・・・・・。


「島田くんの番ですよ」

「あ、俺の番ね」


安城さんの手札からクラブの8を取る。

何故さっきから1枚も捨てられないのだろうか。

運・・・・・・というよりも仕掛けハメられてるよ。

神様を恨むというのはこういうときに使うのだろう。

いや、神をそう簡単に恨んではいけない気がする。

安城さんが圧勝すると、陽菜も続いて上がる。

これで俺は0勝12敗

陽菜と安城さんはそれぞれ6勝。

俺が勝たないのはどうしてだろうか。


「お兄ちゃん、弱くない?」

「これは運だよ・・・・・・」

「島田くん、陽菜ちゃん、夕食はどうしますか?」


もうそんな時間か。

そろそろ家に帰るかと思ったら、陽菜が思わぬことを言った。


「俺は何でもいいけど」

「陽菜が作る」

「え!?」

「フフ、分かりました。私もお手伝いしますね」

「あ、おい・・・・・・」


聞こえてないな。

陽菜は台所に安城さんと向かって行った。

しばらくすると、安城さんの姉の靜枝さんが和室に来る。


「あれ、キミ1人?」

「あ・・・・・・はい」

「閑華はどこに行った?」

「台所に・・・・・・」

「ありがとう」


そう言うと靜枝さんは台所の方に歩いていった。

俺を1人にするのやめてくれる?

何を話していいかわからなくなる。

しばらくすると、安城さんと陽菜と靜枝さんで和室に入ってくる。

丁寧に全員分配ると、座る。

食べ始めると、安城さんが靜枝さんに訊く。


「お姉ちゃん、進み具合はどうですか?」

「いい感じだよ。ただ間に合わない・・・・・・」

「サボってるからですよ」

「靜枝さんは何か出版しているんですか?」

「敬語使わなくていいよ。うん。一様ペンネームサザンクロスでね」

「有名じゃないですか」


ビックリした。

安城さんが言っていた収入ってこれのことだったんだ。

なるほど納得。

あんな凄い漫画を描いている人がここにいるとはな。


「ねぇ靜枝さん、陽菜とっても気になってるんだけどさ」

「うん?何が?」

「なんで家族と縁を切ったの?」

「あぁ。そのことね。あれ?

 そのことを知ってるなら閑華から聞いてるんじゃないの?」

「いえ、流石に教えてませんよ」

「閑華、教えてもいいと思うんだけどね」

「私はどちらでもいいですよ」

「陽菜は気になるから教えてほしい」

「じゃぁ話すよ。簡単に言うとね虐待」


え・・・・・・?

虐待ってあの虐待だよね。

躊躇なく言った靜枝さんが口を開く。


「閑華、後はよろしく。続き描かなきゃいけないし」

「分かりましたよ。あれは確か小学2年生のときのことでした。

 親が再婚し、母に連れられ新しい父のもとに行きました。

 数日間はとてもいい人でした。

 いや、あれは怖さを隠すためなのかもしれません。

 数日経つと、暴力はもちろんのこと、姉が聞いたのですが、

 私達を売り飛ばす計画も立てていたらしいです。

 ちなみに私は永遠の傷もつけられました」

「どれ?」


陽菜が興味津々に訊く。


「あまり見せたくないです。まぁ、いいですけど」


服をまくり背中を見せる。

中央当たりに大きな傷があった。

相当酷くやられたのだろう。

服をもとに戻すと続きを話す。


「そして私と姉は親戚の家に逃げ込んだんです」

「そうなんだ。それで、この家は?」

「親戚の家も危険だろうということで家を1軒もらったんです」

「なるほど。流石にそんな知り合い安城さんが初めてだよ」

「でしょうね」


安城さんが言い終わると同時に紅茶を飲んだ。




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