1-6

水無瀬は窓から下を見下ろす。

サイレンの音は先程からしているが、突入してくる気配はゼロだ。

水無瀬は、懐からスマホを出す。

おいおいおい、スマホ2台持ってるのかよ!?

まぁ、当然と言えば当然か。

水無瀬が電話をする。


「今、中の図書館に居まして・・・・・・はい・・・・・・分かりました」


水無瀬が電話を切ると、窓を開ける。


「島田くんと安城さん。目立つもの、持ってないですか?」

「持ってますよ、どうぞ」


安城さんが赤い布を出す。

何で安城さんはそんなの持ってんの?

水無瀬はそれを受け取ると、窓の外でひらひらとする。

こんなんで来るのかと思っていた矢先だった。

近くに飛んでいたヘリコプターが近くに寄って来て、ガラスを風圧で粉々にする。

安城さんと俺はガラスを避けるように棚に隠れる。

ヘリコプターの中から警察官がたくさん降りてくる。


「皆さん、大丈夫でしたか?」


警察官が問いかける。


「水無瀬探偵、後は頼みましたよ」

「分かったわ。まず・・・・・・」


水無瀬と警察官で細かく話している。

あれ・・・・・・安城さんは?

まぁ・・・・・・いいか。

その時に、誰かの着信音が鳴る。

1人の警察官がスマホを出して電話に出る。


「はい、相川。うむ。分かった」


相川と言う人が机にスマホを置く。


「石川、頼む」

『はい。水無瀬探偵、計画を教えていただけますか?』

「わたくしが考えているのはまずここから出て、周辺のテロ犯を確保する。

 後に計画を聞き出し、そこからは臨機応変に対応するって感じですかね」

『・・・・・・最悪の事態になりかねませんね。

 まずそこの窓から2階下に降りていただくのが最善かと』

「え・・・・・・あなたもしかしてこの建物にいるの?」

『まさか。建物の構造から分かるんですよ。安全な場所が。

 そこからは水無瀬探偵と同じ計画でいいかと』


おそらく電話相手は石川YUZUさんだろう。

初めて声を聞いたな。

こんな声なんだ。

警察が2階下に降りていった。


「ふぅ。疲れた」

「お疲れ様です、水無瀬さん」

「うお、ビックリした」


安城さんが俺の後ろから声をかける。

またかよ。

ていうか安城さんどこに居たんだよ。


「安城さんどこに居た?」

「え?ずっとここに居ましたよ」

「そうか」


俺が気づかなかっただけか。

ごめんなさい。

水無瀬が一件落着と言うように壁により掛かる。

安城さんは水無瀬をちらりと見る。

安城さんが目を擦ると、俺と目があった。


「お手柄だった水無瀬探偵」


警察官が一気に入ってきた。

あ、捕まえたんだ。


「私達は先に行きましょう」

「そうだね。水無瀬はこれから忙しくなりそうだしね」


俺と安城さんはここを後にしようとすると、水無瀬に呼び止められる。


「一様事情聴取があるから残ってくれる?」


水無瀬が振り返って言う。

俺と安城さんは元の場所に戻ってくると、事情聴取まで待つ。

事情聴取ってあれだよな。

刑事ドラマとかであるやつ。


「水無瀬は本当にすごい人だな」

「私もそう思います。先程のようにピンチでも策を考えて

 乗り越えていくところとか凄いですよね」


俺と安城さんは1人の警察官に連れて近くの個室の前に来る。

なるほど、事情聴取ってこれのことなんだ。

俺の番になって、中に入る。


「えっと、まずこれは君のスマホかな?」

「そうです。ありがとうございます」

「少々傷ついてしまってるが・・・・・・」

「全然気にしてません」


何個か質問をされた。

どういうことをされた、とかどういう方法でビルジャックしたかとか。

そんなこと俺は知らねぇよ!


「そうか。最後に1つ、慰謝料は請求するか?」

「・・・・・・しません」

「何故ですか?」

「お金に興味が無いので」


俺は全てに素直に答える。

現代人はお金こそ全てと思っているのだろうか。

大きな間違いだ。

俺は部屋から出ると、安城さんが入れ違いで入っていく。

しばらくすると、安城さんが出て来た。


「安城さん、こういう経験初めて?」

「あ、もちろんです。緊張しましたよ。特に最後の質問なんて」

「あ、安城さんは慰謝料どうするの?」

「いりません。お金に興味ありませんので」

「俺もだな」


安城さん、こういうところは芯がしっかりといているんだよな。

俺は安城さんと水無瀬を駅で送るとエレベーターホールへ向かう。

エレベーターの回数表示を見ながら、今日あったことを整理する。

家につくと陽菜が立っていた。


「大丈夫!?」

「あぁ、大丈夫。なんとも無いよ」

「本当!?」

「もちろん。嘘はつけない性分だからね」

「そうだったね」


いつもは質問攻めにしてくる陽菜は今日も質問攻めにしてきた。

父さんと母さんにも事情を説明する。


「お前の身に何もなくてよかったよ」

「本当よねぇ」

「いつも大げさなんだって」

「そんなことないだろう?今日みたいなことが合ったときに困るだろ」

「まぁね」


否定できないところが悲しい。

俺は自分の部屋に入ると、今日あったことをもう一度一通り整理した。

ていうかさ、入学して4日目でこんな事ある!?

生きていて初めてだよ。

テロに遭ったなんて。

みんなもないでしょ!?

俺は食事を食べて、シャワーを浴びて再度部屋に戻り、日記を書く。

何を書いていいのかわからず、とりあえず事実を箇条書きで書いた。

布団に潜ると、疲れていたからかすぐに寝ていた。



朝起きると、まず洗面所に行き顔を洗う。

スマホを開くと、安城さんから連絡が来ていた。


安城閑華:≪島田くん、よければ朝一緒にランニングに行きません?≫


夜の10時に来ていたようだ。

オッケーと返信すると直ぐに返信が来た。

待ち合わせ場所は梅川中央図書館。

陽菜には一様今日は友達もいる、と言うがお構いなしに着いてきた。

俺は家を出て、梅川中央図書館に向かう。

入ると安城さんと水無瀬が2人で話していた。


「あ、おはようございます。島田くん」

「おはよう」

「そちらが妹さん?」

「あぁ妹の陽菜だ」

「私と同じで陽菜ちゃんもオッドアイなんですね」


安城さんは今日はコンタクトをしていなかった。

雑談は走りながらすることにして、ランニングに出る。


「安城さんはいつもどれぐらい走ってるの?」

「ざっと20km~30kmですね」

「20kmか。凄いな」

「水無瀬さんはどれくらい走ってるんですか?」

「10km。安城さんとは比べ物にならないね」

「俺らも12kmくらいかな。安城さん、陸上選手か何か?」

「いえ、小さい頃から走ってたらこうなってました」


いやいやいや、俺も小さい頃から走ってるよ!?

安城さんいつから走ってるのよ!?


「昨日は色々ありがとうございました、水無瀬さん。おかげで助かりました」

「いえ、わたくしではなく警察の方々が速やかに行動してくれたおかげですよ」

「水無瀬はなんで探偵をやってるの?」

「わたくしは趣味で探偵を始めたんですよ。そしたら思いの外できて続けてているんです」

「へぇ、そうなんだ」


なるほど。水無瀬は才能があったんだな。

陽菜は勉強の才能あるし、安城さんは走る才能がある。

俺はなんだ・・・・・・?

えっと・・・・・・えっと・・・・・・ない・・・・・・な。

クソッ。

悲しい。

諦めるな、いつか探してやる。

その後、10km前後走ると解散する。

俺と陽菜は安城さんの提案で新狩場に行こうということで準備をする。

駅で安城さんと合流し、電車に乗る。


「島田くん、今日は図書館でいいですか?」

「俺はいいよ。陽菜はそれでいい?」

「いいよ。陽菜は読みたい本あるし」


会話をしていて気付いた。

周りの人の視線が集まっていることを。

それはそうだ。

オッドアイが2人もいればな。

電車を降りると改札へ向かう。

階段へ向かっている途中に陽菜がつまずく。


「ん?うわ〜!?」

「大丈夫ですか?」

「ありがとう」


陽菜の手を取って安城さんが引っ張る。

安城さんと俺達は駅の階段に差し掛かった。




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