第32話 【番外編】ツナマヨの1日
漆黒剣士ツナマヨことツナマヨは、二十歳を超えた立派な大人である。
すでに
二十歳超えが「ふぇぇ」とか「ひぇっ」とか「ふぉぉ……!」とか言うだろうか。配信者としてキャラ付けのためにやっているならば、そう疑問に思うことはないが、奴の場合は素面で『あざと二次元発言』をするのだ。
イタい……が、妙に似合っているため苦言を呈しづらいのも事実。
さて、そんなイタい女の1日を紹介しよう。
「はっ……!? 駄目ですよ花依さん、私の秘められし魔眼が……って、朝ですか」
ツナマヨの目覚めは夢からの解放を指す。
花依の出会う前は、専ら夢から醒めたくないと布団の中でゴネたものだが、最近になりゆっくりとだが大人しく布団から出るようになった。
「ふぅ……朝は寒いですねぇ……」
パチリとストーブの電源を入れて「ふわぁ」と腕を伸ばして欠伸をする。
その瞬間にズレて肌けたキャミソールによって、花依検閲済みの膨らみが見える。自分のことに無頓着で──全智とは別種の鈍感であるツナマヨ。
花依曰く、そんなところが無防備で好みらしい。お前の性癖はどうでもいい。
「うぅ……寒い朝は億劫ですぅ」
基本が敬語のツナマヨは、別段自分の口調に違和感を持つことはない。そもそも小、中、高とほとんど誰とも話さなかったことが原因なのだが。
肥大化した人見知りと陰キャは、花依によって解消された悩みの一因を担っていたこともあり、幾分かマシにはなった。
配信に限ればコミュ力はある方なのだ。
ツナマヨは震えながら顔を洗い、ボサボサの髪の毛をセットする。
そのままキッチンで簡単な朝食を作る。
「味噌汁が染みるぅ……ワカメちゃんが踊ってるぅ……」
意外なことにこのツナマヨという社会不適合者は、家事に関しては人並み以上にこなすことができた。
一人暮らしゆえに身に付けなければ生きていけなかった……という切実な理由があるものの、本人も別に家事を苦に思っていない。
とことん閉鎖的な環境だからか、自分周辺の環境だけはせめて良くしようという心づもりなのだろう。
「今日は暇ですし配信でもしましょうかねぇ。花依さんを誘って……あぁ、今全智さんのお宅にいましたか」
ツナマヨはガックシと肩を落とした。
意気消沈を乗り越えた後に飛来した感情は微かな嫉妬と寂しさだった。
「むぅ、花依さんが人気なのは分かっていますけど、少しくらい私に構ってほしいですよぅ」
微妙にツンデレのツナマヨだから、面と向かってその言葉を言うことはできないが、確かに会ったことのない0期生に嫉妬していた。
堕とすだけ堕として放置プレイですか! と憤るツナマヨの元に一通のメッセージが届く。
ーーー
花依『明日コラボ配信しないー?』
ツナマヨ『ええ、ええ、構いませんとも! 暇ですので!』
花依『ツナちゃんはどうせいつも暇でしょ』
ーーー
ぱぁと顔を輝かせるツナマヨ。
嬉しさと感動の相混ざったような表情だ。
「ふふふふふ……はっ! こ、好感度管理が上手い……っ! なんでこんなタイミングバッチリなんでしょうか!」
我ながらチョロいと思いながらも、胸にあふれる喜びは事実なんだと苦笑するツナマヨ。
実際、そろそろ拗そうかな、と察した花依が好感度管理に走ったのだが。無論、花依の好感度管理=『逃さねぇ、完堕ちさせてやんぜ、ベイベー』なので悪意はない。悪意か? これ。
……花依にしてやられたツナマヨは、一矢報いてやろうとメッセージを送った。
ーーー
ツナマヨ『ど、どうですかぁ? 私の家に来てお泊りオフコラボでもしていいんですよぉ?』
ーーー
「むふふ、これで花依さんは照れるはず! 私にかかれば堕とされるだけなんてことはあり得ないんですよぉ!」
自信満々に胸を張るツナマヨ。
しかしお忘れではなかろうか。
ツナマヨは悩殺と言って聞きかじった色気もクソもない発言を言ってガバるような女である。
そんなアホが仕掛けた場合──
ーーー
花依『え? 良いの? じゃあ、住所送ってね、行くから』
ーーー
「ふぇ?」
──予想だにしない反撃を食らうことは必然である。
その後1時間ほど固まっていたツナマヨは、再起動するなり叫んだ。
「うぇぇぇえええええぇぇ!!???!!??」
だからあざといんだって。
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お泊りイベは2章の初手に出します。
つまりお預けです()
お次はクラシーの1日と掲示板回を投稿して番外編は終了です。
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