第7話 現実世界でもそこはかとなく匂わせたい百合の波動②

 面倒事は降って湧くものだと思う。

 持論でも何でもなく、単なる経験則からの事実だ。オカルト的な話と交わらせると、面倒事に巻き込まれる時は大抵首の裏にピリッと謎の痛みが走る。


「あー……面倒事来ちゃったか」

「どうした?」


 川内が私の表情を見て首を傾げる。

 今は放課後。ちょうど帰ろうとしている時に走った首裏の痛み。こういう時の勘はよく当たる。


「川内。ちょっと用事あるから先帰っててくれない?」

「ん、良いけど早く追いついてよね」


 何かあると察したのか、微かに心配を瞳に宿して渋々と教室を出た。

 

 そのタイミングで立ち塞がる二人の女子。

 朝方睨んできた二人組のギャルだ。


「ちょっと良い?」

「校舎裏についてきてほしいんだけど」 

「話がある」

「逃げようたって無駄よ」



 ……うん。うん。



 一人ずつ喋んなや。




☆☆☆


 連れて行かれたのは典型的な校舎裏。

 人もいないし、草木は荒れ果ててがある。

 

「いったいどうしたの? こんなところまで連れてきて」


 さて、と二人に向き直って問い掛ける。

 尚も睨みつけてくるギャルたちに辟易としながらも、ここまで行動を起こしたなら何かあるだろうと相手のアクションを待つ。


 すると、金髪と銀髪のギャルのうち、金髪の方が気の強そうなツリ目で私を睨んで言う。


「気に入らないのよ。お高く止まってさ。今日だってわざと幸喜くんの近くに座ることで繋がり持とうとして必死かよ」


 いや、深読み……。場所選んだの川内だし。

 ……まあ、こんなことだろうなと思った。いつだった嫉妬は行動に移せば攻撃となる。その手段が口撃であれ物理的な攻撃であれ面倒なものだよ。

 私が可愛いのが悪いのか……多分そうだね!


 続いて銀髪の方が言う。


「確かにあんたは可愛い。でも、それが気に入らない。あんたなんかに幸喜くんは似合わない。私たちも似合わない。誰にも付き合って欲しくないの、幸喜くんには」

「なるほど?」


 なんだただの厄介オタクか。

 リアルに推しがいるだけで私の同類じゃん。そりゃ、推しに美少女が近づいたら穏やかじゃいられないよね。分かる。


 この学校面倒な奴ら多すぎじゃん。私然り。

 あと、イケメンくんは二次元の世界にいるから誰とも付き合わないと思うよ。


 ……まあ、唐突に『嫁ができた』とか言ってこの二人の脳が破壊されることがあるかもしれないけど。

 そこは仕方ない。


 ……ただ、毎回こういうことが起きるのは面倒だ。

 メンタル的にも時間的にも勿体ないでしょ?


「黙ってないで何とか言ったらどうなのよ」


 金髪ギャルの言葉に、私は行動で示す。

 3メートルほどだった距離を縮めてゆく。『な、なんだよ』と二人が狼狽えるのも構わずに、私は壁際まで二人を追い詰める。


「ねぇ、二人とも。もしも私が──女の子のことが好きって言ったらどうする……?」


 声を変える。

 ハスキーボイスinゆらぎ。

 二人をまとめて壁ドンし、耳に息を吹きかける。


「「──ッ、ひぅ」」


 二人揃って顔を真っ赤に染めて、腰が抜けたようでその場にへたりこむ。意外と可愛いところあるじゃん。


 数分待って二人が回復すると、彼女たちはフラフラしながら一字一句同じ言葉を言う。


「「た、多様性の時代なんで良いんじゃないですか……」」


「そうくるかぁ……はははっ、まあ冗談だよ。ただ、恋愛も興味ないし、あなたたちの気持ちも分かるには分かるから、近づかないでって言うならそうするよ。元々委員会が同じなだけで大した関わりはないし」


 それでどう? と二人に問うと、まだ衝撃から覚めていないのかふるふると力無さげに頷いて去っていった。

 

 行動としては褒められちゃいけないもんだけど、正面切って理路整然とした理由と正直な気持ちを伝えてきたのは好感度が上がる。別に怒ってもいないし、これはこれで青春っぽくて私は好きだよ。



 ……問題は私がTSガチ百合Vtuberっていう中身の問題だけど。


 


 




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

投稿するの忘れてたので今日はもう一話投稿します。


次話からVtuberに戻ります。

作者的に川内がお気に入りキャラなので、学校パートはたまに入れたいと思います。

いらんという方が多ければお蔵入りしますが……笑

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