2-3 快楽の虫

2-3 快楽の虫

野比沢が逃げ去って、辺りに静寂が訪れた。本当に物音一つしない。わたしは目を閉じて心を空っぽにした。

……、……、……。

しばらくじっとしていると、だんだん体に力が戻ってきた。

わたしは立ち上がって、ゆっくりと辺りを見回す。

溶けた鉄みたいに赤く歪んだ夕日が、黒い林の合間に沈んでいく。高い木々に囲まれた公園の中はすっかり暗くなっていた。林道のベンチには誰もいない。それどころか、不思議なことに辺りには人の気配が全く感じられなかった。

さっきから静かすぎる。あれだけ激しく戦っていたのに……。

わたしは釈然としない気持ちで耳をすませる。しかし不自然なほどに辺りは静まり返っていた。まるで世界がわたしの様子を伺っているみたいに。そういえば、真央と公園に入った時から辺りには人気がなかった……。

少し考えたけれど、公園に人が居ない理由も、『常世の蟲』を食べてからの出来事もわたしの理解を遥かに超えていた。

考えても仕方ない。

わたしは気を取り直して仰向けで倒れている範田真央に近づいた。

やっぱり彼女は完全に死んでいた。

心臓を撃ち抜かれ、顔には驚きと恐れの表情が張り付いている。

わたしは長い間、真央の左胸にポッカリと開いた穴を見つめていた。

わたしが、この手で、殺した。

死体を前にしても、想像していたほどには罪の意識を感じていない自分に驚いた。

悪いことをしたとも、悲しいとも思わない。

ただ破れた服から露出している真央の乳房を見て「やっぱりわたしよりも胸が小さいな」と思った。真央の胸は本当に僅かにしか膨らんでいなかった。それに乳首はレーズンみたいで可愛くなかった。お姉ちゃんの薄いピンクには遠く及ばない。

わたしはこの女に引け目を感じる必要はない。だって真央は初めからわたしを殺すつもりだったのだから。わたしが少しでも気を抜いたり、ためらえばこうして倒れていたのはわたしの方だったはずだ。それに胸だって小さいし、乳首も黒ずんでいる……。

なんだか急に肌寒さを感じたわたしは肩を抱いて身震いした。

ふと、真央の体からキャラメルのような甘い匂いがした。初めて会った時にも嗅いだ匂いだ。

「あれ? 」

その時わたしは真央の死体の異変に気づいた。

すらりと伸びた長い足の付け根。ショートパンツの形が……、なんだか……、おかしい。

紺色のショートパンツの股間はまるでテントを張ったみたいに膨らんでいた。

少し迷ってから、わたしはおずおずと手を伸ばすと、真央のショートパンツを膝のあたりまで下ろしてみた。

そこには白いフリルのついたかわいいショーツの生地を押しのけて、立派なおちんちんが反り返るようにはみ出していた。

「えっ!? 」

びっくりしたわたしは思わずバランスを崩して尻もちをついた。

真央の股間には立派な男性器があった。おちんちんの周りには全く毛が生えていなかった。そして根元にはシワシワの睾丸が見える。

あたりに漂う甘い香りはより一層強くなってわたしの鼻を刺激してくる。

「お、男!? 」

心臓が早鐘のように打った。なぜだが瞳が潤んでくる。息を呑んで目の前の勃起した男性器を見つめる。おちんちんから目が離せない。

今度は躊躇わず、わたしは真央の履いているショートパンツと可愛らしいショーツをスルスルと完全に脱がせた。それから彼女の足を大きく開かせて股間を間近に観察する。

思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

それはまるでまだ生きているみたいに赤黒くピンと立ち上がり、血管を浮き立たせていた。

「すごく……、大っきい」

真央の勃起した性器はわたしが見たことのあるおちんちんよりも遥かに大きかった。とても同じものとは思えない。

おずおずと手を伸ばす。それに触れてみたくて仕方がなかった。

震える指先でわたしは真央のおちんちんを握った。

「……硬い」

完全に死んでいるはずなのに、そのおちんちんはとても硬くて、まだ生きているみたいに暖かかった。

少しためらってから、わたしは左手を真央の睾丸に添える。シワシワの膨らみからも、ハッとするような熱を感じた。

恐る恐る右手で、そそりたった男性器をさすってみる。

「ドクンッ! 」

おちんちんが大きく脈打た。

ビックリしたわたしは思わず手を離したけれど、またすぐにそれを握る。

おちんちんの先からうっすらと金色に輝く、ネバネバした液が漏れ出した。

甘い匂いが一気に強くなった。

唐突にジワっと涙が溢れた。呼吸が荒くなっていく。さっき蟲を食べた時の感覚が鮮明に蘇ってくる。小さな小さな花火が線香花火みたいに頭の中で「パチ、パチ」と弾けていた。

わたしはたまらなくなって右手でおちんちんの根元を摩りながら、その先端に唇をつけた。そうしない訳にはいかなかったのだ。全身がそれを求めている。自分の乳首が硬くなっていくのがわかった。鼓動がどんどん早くなる。

「んんっ……」

わたしは勃起して赤黒く膨らんだ鬼頭を舌先でヘビのように舐めた。生まれて初めてそんな事をした。彼氏にだってしたことないのに……。

呼吸が乱れて荒くなり、心臓が体から飛び出すんじゃないかと不安になるくらい興奮していた。おへその下あたりがジワジワと疼く。

「はぁぁ……」

悩ましい吐息が自然に漏れてしまう。あたりにはあの甘い香りが充満している。

わたしは大きくて硬いおちんちんを、もうこれ以上入らないというくらい深く咥え込んだ。口の中が男性器でいっぱいになり、喉の奥に硬いものが当る。苦しいけれど……、それでも咥えたい。口の中をコレで満たしたい。

「んんっ、んっ」

口の中のおちんちんに舌を絡ませると舌先に痺れるような甘さを感じた。

わたしは夢中になっておちんちんを舐めた。わたしのアソコはもうドロドロに熱くなっていた。おちんちんを咥えたまま、太ももをギュッと締めて擦り合わせる。

「ふんんっ! んっ! んんっ! 」

気持ちいい! コレ……、たまらない!

頭の中で弾けていた花火が一際大きくなる。

すると真央の陰茎はわたしの口の中でブルブルと震えだした。

真央のおちんちんはサイズが大きすぎて、わたしが口に含めたのは全体の半分くらいだった。口に入りきらないおちんちんの根元は、まるで何かがせり上がってくるように膨らみ、ドクドクと脈動しているのが見えた。シワシワの睾丸に添えている左手の指先にもモゾモゾとした気配を感じた。

わたしは口いっぱいにおちんちんを頬張って、舌を鬼頭に絡ませながら吸い上げた。舌でおちんちんの先から漏れ出るネバネバを味わい、太ももをギュッと合わせて自分のクリトリスを刺激した。服の内側で勃起した乳首が擦れて気持ちいい……。

「ジュポッ、ジュポッ」とおちんちんを舐める下品な音が誰もいない公園に響き渡る。

「んふぅんん……、んふっ、んん! 」

くぐもった吐息が漏れ出る。

そうしているうちに……、それはゆっくりと出てきた。

それはパンパンに張った鬼頭が脱皮でもするみたいに真央のおちんちんからわたしの口の中に入ってきた。

そう、初めから分かっていた。『常世の蟲』は真央の性器に巣食っていると……。

わたしは咥えていたおちんちんを吐き出して、口の中いっぱいに膨らんだ『常世の蟲』を舌で味わう。

ピリピリとした刺激に気を失いそうになる。

わたしは溢れ出し上り詰めようとする快感を必死に抑えて、それをおもいっきり噛み砕きゴクリと飲み込んだ。

瞬間!

脳みそがズルズルとほどけて体から抜けていくような脱力感にも似た不思議な感覚に襲われた。

そこに痛みは無い。全く無い。あるのは身体の芯を揺さぶるような快感だけ。快感の波が後から後から押し寄せる。

止まらない!!

わたしの身体は弾ける寸前のように小刻みに痙攣し、閉じた瞼の裏では赤やピンクの光が花火みたいに炸裂していた。

どうしよう……!? どうしよう!!

壊れる! 壊れる!!

「あひっぃ! ひっ!! ひあっ!!! 」

あまりの快感に恐怖した。

体の奥の奥をチクチクと何かが刺激していた。同時にお湯に浸かっているような浮遊感と温もりが体を包む。バチバチと頭の中で何かが次々に弾けている。それが弾ける度に気が狂いそうな快感が襲ってきた。

これ以上ないくらい硬く勃起している乳首とクリトリス。おまんこがとろけている。耳が……、首筋が……、舌が……、オッパイが……、膣が、子宮が、内臓が、脊髄が、脳みそが!

全てが溶け出す……。

「くぅぅひぃぃぃぃ!!! 」

わたしは堪らずに狂ったような叫びを上げたけれど、刺激は全然、止まらなかった。

目の前に眩しい光が広がって何も見えない!

快感が止まらない! 溢れてくる!!

そうしてわたしは押し寄せる大きな波に飲まれドロドロになった。

「くあぁぁぁぁっ!!! 」

体の芯から叫びが溢れて、何もかも真っ白になる。わたしの全てが溶けてどこかへ流れ出していく……。

「あああぁぁ……」

「ああぁ……」

「あぁ……」

わたしの口はだらしなく開いてよだれを垂らしている。いつのまにか股間から漏れ出していたオシッコは生暖かく太ももを濡らしていた。

「はっ……、はっ……、はっ……」

わたしはしばらくの間、息も絶え絶えに痙攣していた。

世界が終わるかと思った……。わたしがドロドロになって、無くなってしまうかと思った……。

快感は波が引くように、徐々に遠ざかっていった。

強く抱きしめられていたのに急に放り出されたような喪失感だけがわたしに残った。

ポッカリと心と体に穴が空いたみたいな不在感。

けれど辺りにはまだ蒸し返すような甘い香りが漂っていた。

「……。……」

頭の中には1つの事しか無かった。

そしてわたしは再びソレに手を伸ばす。

片手で真央の睾丸をやさしくさすり、おちんちんの先に口を付けた。舌先に痺れに似た快感が再び走る。

真央のおちんちんは硬いままだ。

わたしはおもむろにドロドロになっていた自分のショーツを脱ぎ捨てる。今度は真央の大きなおちんちんをわたしの下の口に受け入れるために……。

ここが新宿中央公園だってことも。真央が女の子じゃなかったことも。死体と交わることも。何もかもが気にならなかった。全く気にならない。頭の中は、この硬くて大きなおちんちんをわたしの中に入れることでいっぱいだった。

張り詰めたおちんちんの先端をヌルヌルになった膣の入り口にそっと充てる。それだけで堪らない何かがジワっと込み上げてきた。

「うはぁぁ……」

我慢できなくなったわたしはゆっくり腰を落とした。

真央の大きなおちんちんがわたしを押し広げていく。メリメリと極限まで拡がった割れ目から、痺れるような甘い痛みが走る。おちんちんの先がわたしの深いところに当たった。

身体の内側から溢れてくる暖かい何かに、わたしは満たされていく……。

ゆっくりと腰を振った。一番深いところへグリグリと押しつけるように真央のおちんちんを咥えて悶えた。

その時のわたしにはわかっていた。まだ数匹の蟲がそこに潜んでいることが……。

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