第3+4話 三の男と四の女について

三の男は、

バーカウンターで思い悩んでいた。

溜め息を吐き、鬱々とした雰囲気を

纏わせながら。

そんな客がいたら、酒もうまくはない

そう考えるのが大半なのだろう。

その男が溜め息をつくたび、

一人、二人と客は、店から出て行った。

バーのマスターは、

怪訝そうに三の男を睨みつける。

それに対し三の男は、

マスターを睨み返した。

「出てってくれ。」

マスターは、コップを拭きながら

呆れた様子で言った。

それを聞いた三の男は、

「お前も俺を馬鹿にすんのかよ。」

そう言って、立ち上がり

マスターの胸ぐらを掴もうとした。

けれど、その瞬間三の男横に男が座った。

三の男とマスターは、驚いたのだろう。

座った男を見たまま固まっていた。

「なぁ、君はここの常連か?」

「ああ?」

三の男は、今の状況を理解できなかった。

男は、それを聞き少し考えた後、

「ああ、すまない。

 初対面なのに距離を詰めすぎたようだ。

 いくら酒を愉しむ場といえど、

 礼節を弁える必要があった。

 申し訳ない。」

男は、頭を深々と下げる。

三の男は、その状況にさらに困惑し、

酔いなどからは、とうに覚めていた。

そして、今自分が

犯してしまっている行為に気づいた。

「すまないマスター。」

そう言って、三の男はすぐに

マスターの襟から手を離した。

「帰ってった客の分まで飲んだら

 許してやるよ。」

マスターは、襟を正しながら言った。

「じゃあ、僕も微力ながら

 お手伝いさせてもらいます。」

男は、笑顔でそう言った。

まるで何事もなかったかのように

初めから、二人の友人が飲んでいたところに

遅れてやってきた友人のように、

二人の間に溶け込んでいった。

「すまないな。にいちゃん

 あんな醜態見せちまって。」

「醜態?よく覚えてないですね。

 実はここは二件目で、

 少し酔ってしまっているので。 

 記憶が朧げな物で、申し訳ない。」

ただ、三の男もマスターも

この男に漢気というものを感じた。

何故なら、この近くで酒を飲めるのは、

ここくらいしかないからだ。

そして、マスターは、

「これは、俺の奢りだ。」

と、男の前に酒を差し出した。

男は、それを一口飲み目を丸くする。

それを見た三の男は、

「うめぇだろ。

 それはなマスターが気に入った奴しか

 飲めねぇ酒なんだよ。」

と得意げに語った。

「ええ、美味しいです。

 今まで飲んだ中でも最も。」

そして、時間が過ぎて、

三人に酔いが回ってきた頃に、

三の男は、悩みを打ち明けた。

女房の様子が変だと。

それを聞いた男は、こう言った。

「その人と会わせていただけませんか?」

三の男は、悩みに悩みそれを受け入れた。

そして、次の日に二人は、

マスターのバーで待ち合わせをしていた。

男は、予定より早くつき、

時間を潰すためコイントスをして、

遊んでいた。

2回3回と立て続けにコインの表が出ていた。

男は、鼻歌を鳴らしながら、

コイントスをし続けた。

そしてほんの数分たった頃三の男が、

女を連れて、バーの扉を開いた。

「すまないな。待たせてしまって。

 こっちは、

 昨日話してた四の女っていう。」

三の男は、物腰柔らかに頭を下げる。

四の女は、それを見て目を丸くしていると、

三の男は、耳打ちをして、足踏みをする。

四の女は、

めんどくさそうにそれを受け入れ、

頭を下げた。

その後、幾分かの話を三人で交わした。

けれど、話は一向に進まず、1時間2時間と

時間だけが進んでいった。

男は、ならと提案をした。

一人ずつと話をしましょう。

片方は、1時間の間私と話を

もう片方は、

マスターと何かをしていてください。

そして、始めに三の男と1時間話をした。

その次に、四の女と1時間話をした。

それから次の月に、男は三の男と四の女の

全財産を奪い取り、

足し算とも言えるような財産を引き裂いた。

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