第5話 五の女

ある所に、五の女がいた。

その女は、詐欺に遭い、

全財産を失い病気になり、

金が不足しているせいで

手術さえできなくなる。

そんな、不幸に不幸を上塗り

するような人生であった。

そのせいか、五の女の目には、

もう光が写らなくなっていた。

けれど、目は見えていた。

それは本来なら喜ばしいことだが、

女にとってはそうではなかった。

鏡が光をその女に向けて反射するからだ。

五の女は、それが嫌で嫌で仕方がなかった。

けれど、ある日病室に光が差し込んだ。

五の女は、

最初は疎ましくそれを見ていたが、

次第に懐柔され、光を好きになって行った。

だが、五の女は、

どうしようもないことを言った、

手と声を振るわせ、

光をおぼろげに見ながら。

この人を殺して、そうでもないと

死んでも死にきれないと

天国に行けないと、そう言った。

言ってしまった。

そして、心拍数は、

ただ一定の数値を示した。

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