第6話六の男
六の男は、噴水に硬貨を投げる。
これは、六の男のルーティーンだ。
なぜなら、この噴水に硬貨をなげ、
それが跳ね返り、自分の元へ戻ってくると、
とても良いことが起こる。
そんな都市伝説のような噂を聞いたからだ。
そして、六の男は、
命の恩人にもらった両方表の硬貨を
親指で噴水に向かって弾いた。
そして、見事自分の足元に転がってきた。
そのあとは、六の男は、包丁を持ち、
ある男を探し続ける。
ただ、六の男は、
その男に恨みの感情はなかった。
ただ、人の役に立ちたかったのだ。
たった一人の役に。
その、たった一人というのは、
病で長くは生きられない女性のことだ。
最期に彼女は、言った。
細々とした声で、縋るように。
この男を殺してと、六の男に写真を渡した。
六の男は、それを頼りに街に出た。
そして、その男を刺した。
その男が持っていた紙袋からは、
札束が山程出てきた。
けれど、六の男はそれに目もくれず、
ただ走った。彼女の元へと。
たった一枚の硬貨を持って
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