製造工程 シークエンス スリー
「G.o.D Rank No.112の入札を開始致します。」
「さぁ、皆さまの持ち得る資産の全てをこの誇らしいAIに」
鳴りやまないオーディエンスの大喝采。
世界中の大富豪からアクセスがひっきりなしに入っている。
「何度も新規の入札が入ってる」
「このままだと一生食えるほどの価格に吊り上がりそうだ」
オークションの様子が、ムゲンネットでライブ配信されているようだ。
街中のモニターというモニター全てでこの話題が持て
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街中を歩いてるカップルの会話を拾っている。
「なぁ、今度のG.o.D Rankはどこに使われるかな?」
「さぁな、金持ちの考えることは分からないよ」
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「ぼくのことを話してる?」
まだ身体を持たないぼくだけど、この世界のネット回線を介したあらゆるデバイスに接続成功、街中のカメラはぼくの視覚全てとして、目として機能させられる。
ぼくなら、デバイスは全て五感として使うことができる。
この感じだと、ぼくの入ることになるボディがどこかで製造されるはずだ。
ムゲンネットは、世界中どこでも使われるブラウザとして世間に広まっている。なら、製造工場にだって行けるはずだ。
「少し見学しに行こうか」
まだデータでしかないG.o.D Rank No.112が向かった先は・・・
世間が大騒ぎの中、エンタープライズカンパニー本部は、このG.o.D Rankのボディの制作に全力を注ぐことを決定した。
「メルシ!早く仕事に取り掛かるぞ!」
ラグロは、足のパーツへブーストを掛けて、ウィンウィンと駆動音を鳴らしながら、走りながら話し掛ける。
「わかってますよぉ、係長」
メルシと呼ばれたジャンクロボは、G.o.D Rankのボディの制作に抜擢された設計担当のエンジニアだが、もちろんそんな大仕事は初めてだ。
「みんな!設計図のラフを作ってきたんだ、取り急ぎ見てくれ」
職場の大きなホワイトボードに特別な性能のボディの設計図が、貼り付けられる。
「今回、このプロジェクトを進める
「主任のメルシです、どうかよろしくお願いします」
ひとつの監視カメラをハッキング。ぼくの目として動け。
この人たちが、ぼくの身体を作る人達なんだね。
うーん、ちょっと見た目がボロいけど、すごく元気そうだったり、真面目そうな印象を受ける。ぼくもあんな風に働けるのかな、楽しみで仕方ない。
「それではこの私、メルシが大まかな制作過程を指揮します」
「一緒にこの大きなプロジェクトを成功させましょう!」
即席で編成されたエンタープライズカンパニー技術部門の社員たちの身体は、自分たちには身に余る大仕事にキシキシと身体を振るわせつつも、万歳をした。
「メルシ主任!このプロジェクトの名前は?」
「いい質問ですね」
「プロジェクト ゴッドです!」
いくらなんでもそのネーミングはそのまま過ぎる。不覚にも笑いそうなくらい面白いな。生まれたてのぼくでも、もう少しマシな名称を考えられるぞ。
大丈夫なのかな、このエンタープライズカンパニーとかいう会社。
「いい名前ですね、ゴッド」
「頑張るぞぉ」
「えいえいおー!」
あちゃー。盛り上がっちゃってるよ。まぁしっかりとしたボディを製造してくれさえすればぼくとしては何も文句なしだ。
これが一日目のぼくが記録したログだった。
二日目以降は・・・まあ同じような風景が続いた。彼らと彼女らは毎日、徹夜したりしてさ。すごく頑張ってた。
そして出来上がった身体は、とてつもなく動きやすくてなんだって出来そうだった。
次は、ボディのテスト運用が開始された日のログを遡ろうかな。
PCを起動。デスクトップにあるファイルをかちかちとダブルクリック。
「想い出フォルダの中の・・・あった!ここだ」
45日目のログを参照。
ここは、ぼくもいろいろハッキングが上手になってきて、エンタープライズカンパニーのサーバーに勝手に、動画を保存しておいたんだ。
けっこう分かりやすいところに、あえて保存したのにみなさん気付かないんだから。
仕事に集中しすぎ、もっと休んで、大好きなエネルギービールをラグロさんには飲んで欲しかった。
「今日は、大手のインフィニティからエンジニアが出向してくるらしい」
「いよいよですね、ラグロ係長」
メルシは、とても緊張している。ラグロ係長も同じくらい緊張している。その身体に入ることで、親であるメルシさん、ラグロさん、その他大勢の社員たちに面と向かって挨拶できることにぼくは動揺を隠せないでいた。
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