第790話 登場人物紹介と補足説明 ③
★獣人の重さで強さが決まる?★
基礎体力を重量のクラスと考えると、重さ=強さとも言えます。
しかし、そこは人間ですから、一概に重いから強いとは言えません。
当たり前ですが、訓練された兵士と一般人では差があるのと同じです。
では、重さとは何か?
血統、才能という意味になります。
先祖返りがそれですね。
★重量は遺伝?★
遺伝です。
カーンが誰の子であるのか、誕生から今に至るまで誰も疑わないのは、何も神殿の名付けがあったからだけではありません。
彼の重量と容姿は、疑うべくもない証拠となっているのです。
実父と彼は双子のようにそっくりです。
これを指摘するとカーンはキレます。
★先祖返りの見た目って?★
先祖返りと呼ばれる人は、獣頭に人型の肉体をしています。
武器庫の管理人であるコルベリウスや、中央軍の偉い人であるギルデンスターン統括長も獣頭に人型の体をしています。..尻尾もありますね。
彼らは人型をとれない分、完全な獣化までがスムーズで、戦闘能力はぶっちぎりに高くなっています。
完全な獣化も巨大で凶悪な魔獣そのものですので、先祖返りの超重量が一体お出ましになると、戦況はコロコロと変わるでしょう。
先祖返りには女性もいます。人族は獣面等と揶揄しますが、獣人にとって先祖返りはチート級の特典です。おまけに男女ともにモテモテです。
★獣人の社会構造★
獣人は母系です。
リーダーが女性である事が多く、近年の男性の統治者が台頭したのは、中央王国が樹立され人族種との融和がはかられた為でもあります。
人族の支配構造に準じる前は、女性が部族内家庭内を掌握する事が健全とされていました。
女性が決定権を握る関係です。
実は一夫多妻の歴史からきています。
通常の一夫多妻とは異なり、女性が主導で、経済活動や育児などを担い、男性の役割が小さかった為の一夫多妻という訳です。
ギリシャ神話の母系部族アマゾーン(アマゾネス)のような感じですね。
凶暴な獣人男性が一般的な獣人像ですが、実際の決定権を握るのが女性という、ほのぼの?な家庭が多そうです。
恐妻?聞こえませんねぇ...
オロフの姉や母親、バットルーガンの伯母達の噂は、元々、そういった文化と社会構造があるからなのです。
カーンの仲間で、その文化と社会構造に大きく影響を受けていると直ぐにわかるのが、三人ほどいます。
スヴェンとオービスと、そしてエンリケです。
特に次章でエンリケは自己嫌悪で_| ̄|○膝をつくでしょう。
★中央大陸オルタスの文明度★
重火器は単発のショットガン程度、それも軍事利用品目ですので一般に普及はしていません。
爆発物も含む化学物質も利用されていますし、物語上、中世のような景色の中にアーティファクト級の異物が紛れている状況です。
現在の人類の生活の平均は近代前ですが、滅び去り記録も消え去ろうとしている前時代が高度な文明を築いていたのが理由です。
オルタスに繁栄していた種族(古の人)が滅び、その後に今の人間がその技術の残滓を利用し生活を支えています。
高度な科学文明があったのかは不明ですが、現在人々が暮らす地面の下には、汚染した土壌と巨大な遺跡が残っています。
王都はその巨大遺跡の上に建造された都市です。
移動手段は騎獣が用いられていますが、航空技術は浮遊船など高度な物が存在します。
識字率は低く、王国軍に入隊すると基礎教育を受ける事ができます。
軍事国家ですので、人としての権利が欲しい場合も、中央へと帰属し兵士としての義務を果たす事になります。
つまり兵士=特権を得る者となります。
そして特権=義務を果たす者だけが得る利益とも言えます。
命を差し出せという命令を受け入れねばならず、そこに人権という考えはありません。
もちろん人権が何であるかの概念は、高等教育を受ければ知る事ができます。
つまり中世レベルの人権意識ですので命の価値は低く、宗教の下支えを許す理由になっているのです。
★医療技術はどうなっているのか?★
医療技術は、民間での進歩を国が阻害している状況です。
高度な外科技術を前文明から引き継いでいるのが、現在の公王家になります。
現支配者の強みは、この医療技術、加工技術の独占にあります。
そして現在、王家の病とされる奇形種(混合体)は、技術探求の結果でもあります。
王種を作り出す研究です。
このような理由から、庶民の医療技術は、薬草(漢方薬も含む)治療が主体となります。
万能なポーション等は、もしかしたらあるかも知れませんが、主人公のまわりではそのような不思議なお薬は登場していません。
そして軍は、高度な外科治療の恩恵と共に、過酷な肉体改造を受けることができます。
このようにオルタスの医療技術は二極化が進む状況。
疫病などが発生した場合、速やかに派兵がされるのも、高度な医療技術は国軍が保有しているからです。
★人種の分布など★
東部は人族、北部は人族と亜人、南部は獣人の割合が多くなります。
物語上、ファンタジー表記(トールキン先生の用語)は極力出さないようにしていますが、亜人等一括りにしている種族も多彩なバリエーションがあります。
ですので、一般的なファンタジー種族は巨人種以外は存在しています。
知的な存在を人間と定義しましたが、人間以外がいないわけではありません。
★オルタス(中央大陸)の地について★
地球の地図を広げてもらうと想像しやすいでしょうか?
まず、ユーラシア大陸をオルタスとします。
大陸の中心には、中原と呼ばれる広大な草原が広がっています。
その中心から真北に古の都跡であるトゥーラアモン等がある森林地帯です。
そして森林を更に北上すると、生き物が住めない絶滅領域である凍りついた山脈があります。
オリヴィアの暮らしていた北の村は街道の終わりに。
中原の西は砂漠地帯です。
西は古い遺跡が多く残されており、東マレイラの長命種が発生した土地でもあります。
さらに南西には独特の砂漠文化を持つ人々が暮らしています。
中原を起点に南が南部亜熱帯地域、東に王都、更に東にマレイラとなります。
東マレイラから見て海岸沿いに南下すると、ユーラシア大陸にはない、大きな出っ張りの半島に到着。
ここが例の場所(封鎖地域・絶滅領域である腐土)になります。
この東南地域は、東マレイラ方向、王都方向、南部南領地域から直通で行き来できる地形ではありません。唯一残されていた東側の海岸線にあった平地は通行不可能になるほど地形が崩れ果てている状況です。
渡る場合は特別に仕立てた低空航路便の飛空船や、海路となります。
その海路も東マレイラ方向からは、現状船を出すことが難しくなっています。
東南地域の土地活用が絶望的になった事と南部との交易の障害原因が今のところ目立った障害でしょうか。
このために、腐土は今のところ、直接下々の生活に深刻な影響を及ぼすまでには至っていません。もちろん前述の通り南部との交易はリスクが高まり、得られるはずの利益と資源が減っている事は確かです。
その荒廃が外に広がらぬ保証も無く、国としてはリスク軽減を積極的に施す事を行っています。
地形による分断だけでなく人工建造物による土地の隔離が試されているのが現状です。(山野や川などの自然防衛線から更に緩衝地帯を設けた巨大な壁と監視塔と
このように中央大陸は広大で、地球と同じく気候も様々です。
因みに月は二つで輝く太陽が空にある大凡の物理法則は地球と同じに見える世界です。
さて、オルタス(オリヴィアは暫し世界を指して使います)を真ん中に置き、東領の海上を更に東へと進み少し南下した場所には、百を越える群島国家にたどり着きます。
海洋民族が暮らし、その島々は南極に程近いジグ島(村人の男女が死にボルネフェルトの下僕となった場所)まで続いています。
海洋民族とは特殊な亜人種と少数の獣人が占めています。
オロドム(この世)の一番大きな国がオルタス(中央大陸名=中央王国名)ですが、東の群島国家とは利益面での激しい対立が継続。
現在は腐土出現などにより低戦中です。
この群島は、小さな島々に多数の家という武装組織を形成。
その総意を纏めるのは大変な事で、家同士も日々争っています。
組織構造も人種もかけ離れていますが、戦国時代の日本のような感じでしょうか。
巫覡の家系が御柱になり総意を纏める役割をしている。
現在の停戦に不服を唱える者も多い状況です。
ジグは南極の近くにあり、常に磁場と海流の影響で荒天が続く恐ろしい場所となっています。
南極は手付かず。
もちろん誰も住んでいないとは断言しません。
何かはいるでしょう。
オルタスの西側、西の砂漠を越えると小国群があります。
海を挟んだ場所に大きな島が二つ、イギリスの辺りですね。
その中間に小さな島がひとつ。
この3つの島国とオルタス西の沿岸の住民を含めて、西の小国群となっています。
こちらは人族と亜人の国々で、獣人はいません。
さて、その小国群から北、地球でいう北欧の方向。
北の絶滅領域を抜けると、北極圏に向かうように広大な火山地帯があります。
ここには蛮族と称される攻撃的な人々が暮らしているとされています。
蛮族と称されていますが、人種は人族と亜人で構成された狩猟民族です。
現在は絶滅領域出現から、物理的に交流が断たれた状態です。
物語はオルタスを舞台としていますが、人口の分布がミ・リュウ(王都)に集中しているわけではありません。
寧ろ、停戦中だというのに王都周辺の活気は失われつつあります。
★季節について★
季節は地球と同じく北半球と南半球では違います。
オルタスの場合はより顕著に気候と季節は違っています。
主に汚染や磁気、磁場異常に絶滅領域などの影響です。
暦は、一年を十六に分けて、春夏秋冬4つに振り分けています。
これは現地の気候に沿っているものではありません。
北の春は南の秋になります。
わかりやすく言えば、北は新年1月が春に相当し、南は秋になります。
しかし現実の気候は、オリヴィアの暮らす村は極寒の冬に相当し冬籠り中。
カーンの領地は収穫祭が新年の行事に重なるのでお祭りです。
そして春夏秋冬があるのは中原の一部地域と東部だけで、厳密には南部は一年中真夏みたいな場所もあります。
このズレは、ミ・リュウに都を定め、色々な基準換算を大陸全土共通にしたからです。
短命人族種を年齢の基準種に定めたのと同じで、遷都の日を暦の始まりにし統一したからです。
本文中、カーンとオリヴィアを占った少女。
彼女は彼らの出身地と誕生時の季節を聞き、暦と季節のズレを理解した上で占いました。
グリモアの指摘道理、中々の腕前だった訳です。
★蛇足①★
主人公は現代人に近い考え方をもっています。
ですが、物語の中では異質で、オルタスの倫理観にはそぐわないものです。
これは主人公の目線からだと実感できないと思います。
物語の構成上、主人公のオリヴィアの異質な部分は出さないように描いているからです。
現地民の考え方とは違うという意味です。
そもそも彼女は、治安状況が最悪の世界で誰も殺していません。
物語の出発点は、自己犠牲でした。
どんな相手にも悪意のある者にしても、常に対話を心がけています。
当たり前だ?
それが当たり前ではありません。
カーンが説教するぐらい自衛という意識が低いのです。
他所の者を警戒していたくせに、きちんと案内した上に、村のためにとカーンを助けたのも、カーン自身に人間としての善き部分を認めたから⇐辺境人はそんな事を考える前に、見捨てて知らないふりをします。
これは養育環境が理由です。
彼女は孤児で、辺境下層の出身だと自認しています。
ですが実際は違います。
彼女は辺境伯の直轄地にて、手厚く保護され養育された。
実に手間暇をかけて教養を教え込まれたのです。
そんな孤児の扱いはありえません。(拾得物として売買する場合が殆どです)
高い教育を与え、生活技術を教え込まれる。
そして居住を認めて暮らしの援助まで受けていた。
本人は気がついていませんが、村の外れに居を構えさせたのは、結局は彼女を過保護に扱っていたからで、大切にしすぎて本人の認識がバグっている事に誰も気が付かない..という惨事だった訳です。
最後に彼女を村から追い出したように受け取れる描写でしたが、実際は違います。
当主が不審死をし、大公子息は首だけになって持ち帰られる。
王都から今後、雪解けをまって司直の取り調べが来る事はわかりきった事です。
そこに主人公を置いておく事は、当然、良くないと皆考えた結果でした。
★蛇足②★
様々な爵位や地位がでてきますが、本来は絶対の身分差、階級差のある世界です。
本来の民草である者が、貴族に声をかけて会話をするというのは有りえない話です。
ですが、主人公の視点だと、これもわからない描写になっているでしょう。
それは中央貴族の株価暴落と軍人地位は高く評価される現状もあります。
つまり爵位より軍人の肩書が幅をきかせている状況です。
オルタスは義務を果たさない者を蔑む考え方があります。
弱き者でもできる事をする。
力のある者こそ多くの義務を担う。
つまり貴族だからと搾取するだけで王国への還元を行わない者は、尊敬をされません。
そしてこの考え方は、非常に差別的な側面もあります。
ここで弱者救済の役割を持つのが神殿勢力となります。
人族獣族統合王家が作る多民族国家であり、公王を総大将に置く軍事国家であり、その公王が信徒として仕える神聖教抱える宗教宗主国という、理由のわからない複雑な国にしているわけです。
さて、そんな戦争大好き千年戦争国であるオルタス中央王国ですが、戦争歓迎という考えばかりではありません。
戦争はできれば回避したい。
今、軍事力に注ぎ込んでいるリソースを、富国に回したいと考えるのは当然です。
この考えは腐土が出現したことで勢力を広げました。
反戦ムードなんて絶対に起きそうもない軍事国家です。
このムーブが波及したのは、やはり国土が腐り落ちるという異常事態の所為でしょう。
停戦が実現したのも、殺し合えば殺し合うほど土地が腐り資源が失われるからです。
しかし、戦争を続けたい理由というのもあります。
支配力、求心力の低下、雇用の面や社会システムの変更に時間がかかるなどです。
★補足の補足★
以上、上記の補足説明は、本文中にオリヴィアが何となくしってるお話、認識範囲の部分です。
実は違うのだ!という情報も入っています。
補足(蛇足)にお付き合い頂きましてありがとうございました。
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