第787話 孤独の岸辺(下)結
ビミンに、手紙を書いてもいいでしょうか?
「魔導云々は書くな。
公爵が買い上げた事だけをかけ。
条件も悪くない。
金も孫に渡る。
真面目に勤めれば、老後は戻されるだろうさ」
老後、ニルダヌスの年齢はいくつなんですか?
そういえば、旦那の年齢も知らないです。
「寿命や成人年齢の基準とか知ってるか?」
いいえ、何も。
亜人と人族短命種の成長過程はあまり変わらないとは知っています。
「ふむ、じゃぁ世間一般の話だ。
大陸人の基本種族は短命人族種となっている。
つまり基準としやすい種族って奴だ。
人族短命種は、寿命が平均で八十から百二十。
成人は十四から十八になる。
これを基準とすると、寿命は長命種が五倍。
獣人が二倍で、亜人は二分の一だ。
これには注釈がつく。
いずれも平均の話って事だ。
長命な獣人もいれば、亜人以下の短命な獣人もいる。
亜人でも長命な系統もいるし、ほぼほぼ短命人族と同等の寿命もある。
つまり、例外ありきの話だ。
そして成人年齢も大凡の話になる。
これは外見や肉体の成長速度にもよるんだ。
長命種でも血が濃くなればなるほど、成人の肉体まで成長するのに時間がかかる。
子どものままの姿で中身だけ大人という場合もあるな。
そして獣人の場合もだ。
外見上と中身が揃っていない場合もある。
これは老化現象にもいえるんだ。
お前の知ってる爺様を例にすると、アイヒベルガー侯爵やコルテス公爵か。
アレらを見れば、特に死に際まで老化しないってのが分かるだろう。
加齢は死に際のみだったり、砂となるまで絶頂期の容姿のままという化け物もいる。
実はこの特殊な加齢は、長命種だけでなく亜人の種族にもいるな。
一生子どもの姿のままって奴だ。
そしてお前の場合は、ジェレマイア曰く、寿命は長命種よりも少し長く、成人にも時間がかかるだろうって話だ。
大凡の長命種以外の人種は二十歳前で成人だが、お前の場合は多分、百三十ぐらいって話だな。
つまり人族短命種で見積もると、十歳?」
違います。
断言しますが、徒弟年齢にはなっています。
「わかってるって、怒るなよ。
お前の場合も、成人すると成長固定になりそうだ。」
成長固定?
「知能の発達が先に進む種族にあるんだよ。
肉体よりも先に、精神が成熟をする。
個体数の少ない種族にある特殊な成長過程だ。
多産な種族には見られないんだが、精神の成長は加速し、肉体の成人年齢は種族寿命に合わせている。
たぶん、お前の場合も中身は徒弟年齢にはなっているだろう。
つまり中身は十四、五か、それより上だろうな。
そうでなけりゃぁ流石の俺でも連れ回せねぇし、会話にならんだろうからな。
肉体は後、倍の時間をかけて成長するが、成人後は長命種と同じく固定される。
まぁ多分だが、ジェレマイアの見立てでは、彼奴と同じで成人後は老化もしないだろうさ。
よかったな、大きくなれるかも知れねぇぞ。」
大きくなるんです。
でも、自分の事なのでしょうが、実感がありません。
故郷の爺達も亜人の中では長生きの種でしたし。
私は育つのが遅い子供か、亜人でも容姿が幼いままの種かと考えていました。
「オルタスの種族がある程度、混血できるってのが寿命や成長の複雑さになってるらしいぞ。
その複雑さの例が俺だな。」
そうなんですか?
「実の父方の血統もそうだが、母方の血も特殊でな。
この二つが混ざるとろくでもねぇ人間が産まれる。
そいつは玄孫までいるっていうのに、俺と外見が大差ない。
長生きな上に老いが死ぬまで出ない、まぁ獣人族長命種って奴だ。
俺もその血が濃いからよ、この目もそうだがよくねぇ血が出ちまうんだ。」
旦那も長生きなんですよね、なら、その良かったんじゃないですか?
「どうかな。
で、そんな訳で獣人にも長命な血統ってのがあるが、逆に短命な者もいる。
亜人よりも短い寿命の者もいるんだ。
ニルダヌスは、その中間ぐらいだろう。
まぁ一般的な獣人だな。
外見が少し老けて見えるのは、擬態を解けなくする加工の所為だ。
十分に戦えるし、体力もある。
短命人族種でいえば、五十ぐらいだろうな」
そうなんですね。
で、旦那はおいくつなんですか?
「ニルダヌスの話じゃねぇのかよ」
結局教えてもらえなかった。
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