第745話 俺は変わったか? ⑱
「了解した。はぁ〜箱も開いたし義理も果たした。医者に行くぞ、俺は手も洗いてぇ」
「おい、待ってくれ。彼女は何と言っている?」
「信じてねぇんだろ?」
カーザがぐっと言葉に詰まる。
信じていない?
「何と言っているんです?」
バットは床に転がった物を拾い集めながら、私を見ていた。
その姿を鼻で笑うと、カーンは答えた。
「そいつはペドフェリィのお得意技と同じ代物って奴だ。
あの手のキチガイが作った代物なんじゃねぇか?
触ると穢れるし、よくねぇもんが伝染るとよ。
実際、腐敗はしてねぇがクセェのは、その所為って話よ」
「ペドフェリィ、名前か?」
首を傾げるカーザに、バットが顔を引きつらせて言う。
「犯罪者です。
あ〜何といいますか、人の皮を剥いで服を作った事が有名です。」
「女子供には耳に入れねぇ話だ。
こっちの地方じゃぁ有名な人殺しでな、まぁそういう奴が昔いた。
まさに、それの品かもしれねぇなぁ」
カーザとバットは、小箱の本を凝視。
多分、先程の異変の時よりも驚いているようだった。
『想像力の問題じゃないの?
彼らは信じたい事だけが聞こえるし見える。
なら、現実の人殺しを例にあげたほうが理解できるんだろうね。
因みに、
彼が好んで子供や少女を標的にしたからだよ。
彼が有名なのは、精神医学的にその精神構造を調べるべく長く死刑にならなかったのもある。
まぁ無駄知識だし、女の子に話す話題じゃないね。
実は東の貴族出身、長命種だったりするんで、庶民にはこの話題は広まっていない。
そしてこの泣き虫は、彼の作品ではない。
彼が生きていた時代より、もっともっと古いんだ。
まぁこの泣き虫の存在を知って啓発されたんだけどね。
あぁ最悪だ?
その通り。
これの元の持ち主が事件を知ってね、彼は死よりも遥かに素晴らしい歓迎を受けた事だけは言っておくよ』
持ち主を知っているのか?
『知りたい?』
知りたくない。
『ふふっ、よろしい』
「生暖けぇし気持ち悪いよなぁ。
まっ俺達の用事は終わった事だし、こいつの吐いたの片付ける人間を入れるぞ」
自分で掃除します、ごめんなさい。
「謝らんでいい。
こっちこそ、悪かった。
無理な事をわかっててさせちまった。
こんな馬鹿らしい事に付き合わせちまったしな。
初めからわかってたのによ、無駄だって。
で、お前ら何か言う事ねぇのか?」
カーンの問いに、バットは何も返さず、カーザは目をそらした。
「俺じゃねぇ、こいつに何か言う事があるだろう?
それとも、横っ面張り飛ばさねぇとわからねぇか?
あぁわりぃわりぃ、いつもみたいに問答無用で、そこの窓から下に叩きつければいいか?
地面の赤い染みになりてぇならいいぜ?」
と、カーンは声を出して笑いながら二人に向き直り手を伸ばした。
それには慌てて、バットがカーザの前へと体を滑り込ませた。
「部屋の始末はこちらでしますよ。
ただね、こちらだって悪意はないんですよ」
それにカーンは動きを止めた。
「発見した時も、送った先でも、何もなかったんですよ。
だから、神殿の方から言われた通り、こうして届いた物を速やかに処理しようとしたんですから。
わかりますか?
我々は何もしていませんし、それを開けて彼女が吐いたのは、彼女がおかしいだけでしょう?」
「俺の耳は腐ったのか?
神殿から返送してきた代物は、巫女が直接触れるんじゃねぇって注意書きがあったはずだ?
だが、肥溜めみたいな馬鹿のお前が、こいつの神性を疑って試した。
馬鹿だからしょうがねぇ。
付き合ってやったじゃねぇか。
こいつは神性を証明し、お前らのかわりにこれの毒にあたって目を回したんだ。
それもそのままにすれば、お前らが死んじまうだろうからって、毒を宥めてみせたんだぜ。
神殿の巫女が呪詛をおさめた。
お前ら東部の貴族、お前らの親どもなら、浄財を山のようにして詫びをいれるところだ。
因みに、こんなアホみたいな事を肥溜め以下のお前らにいっているのはな、この小さい巫女見習いの前だからだ。
公平やら正しい事を信じている神様のお使いの前だからだ。
元々、お前らカスの事なんてどうでもいいんだ。
こんなに親切にお喋りとやらをしたくねぇんだよ。」
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