第687話 挿話 兵(つわもの)よ、剣を掲げよ盾を押せ (下)後編 ⑥
又、住民の証言から、関から内地に向かった者が多数報告されている。
生存者の構成は、若年層、または高齢者、体に病や欠損のある者だ。
性別は女性が九割、高齢者では男性も含まれる。
この事から、健康な成人男性が主な標的と考えらた。
現状については、生存者は何れも著しい健康状態悪化がみられる。
主な症状は、消化器系の不調、下血、下痢、嘔吐などの中毒症状。
それに伴う貧血による眩暈などが多い。
この事から治療の為に、関、またはシェルバンからの退避を促す。
水質汚染の兆候ありとして、近隣の村落、汚染症状のみられない場所への住民の退避となる。
一部、抵抗する住民もみられたが、多くが女性や子供、老人であったために、同じシェルバン領地内ならばと移動を開始。
これをもってシェルバンへの初期通報とした。
この通報から一日以内に、中央からの特別通達が行われる。
シェルバン公爵への直接対話を求める水晶通信だ。
内容は王国中央軍の現地駐留開始である。
公爵領地の不適切な自治、及び、王国が定める法規違反による、公爵自身の自治能力の可否判定、つまり中央出仕の申し渡しだ。
この間、関住民の移送を行う。
近隣の比較的大きな村落に、住民の移送を完了する。
医療提供や食料支援を中央軍から申し出る。
これに対し、村役人からの回答は無し。
王国中央軍獣人兵の駐留を拒否拒絶する為に、村落へは移送のみとなる。
しかしてこの後に、中央の本格的な防疫部隊が派兵開始。
これを拒む場合は、王国反逆罪としてシェルバン自治権の剥奪を通達。
返答無しの為、シェルバン公爵領地境の関は、この後、中央軍の防疫隊が占領。
シェルバン人の領外脱出は事実上、防疫処置の為に禁止となる。
この一連の流れは、関を焼却後三日。
焼却した中央軍伝令隊は、帰路についた。
シェルバン内地から遅ればせながらの監視が着くも、何れも脱落、または拿捕。
又、関で発見されたあるモノにより、中央の殲滅提案が一時停止となった。
マレイラの浄化、及び、殲滅は、一時見送られる事となった。
***
イグナシオ達は、帰還後直ぐに、コルテス公爵の復帰随行任務へとつくことになる。
中央派兵、殲滅の任務は今のところ見送られた。
あくまでも、東マレイラ内部での解決を最初に行う事となった。
それだけの時間的余裕があると判断されたのだ。
これは医師団の見解と神殿側から齎された嘆願によるものだった。
あくまでも、この問題は東三公爵による解決が望ましく、当事者の手による内部自浄によって行われるべきとの指示がなされた。
又、モルダレオ、スヴェン、オービスの三名は、アッシュガルドでの問題に対処。
コルテス公爵の領地復帰の随行任務にはエンリケとボフダンの客人であるサックハイムも参加。
出発は、中央が殲滅中止と判断したモノが戻り次第となる。
関で発見されたモノ。
関の地面が弾けたように穴が開き、その穴の底から壊れた棺が発見される。
中身は粗方溶けていたが、ひとつだけ形として残るモノがあった。
煤けた革の小さな本。
手のひらに収まる小さなソレは、外気にさらされ息をつく。
棺から発見された物だ。
遺品である事はわかる。
本その物には鍵がかけられており、中身はわからない。
これまでも変異体騒動がおきた場所では、何かしらの破壊があった。
今回は、まるで落雷のように地面が弾けた。
弾け、コレがでたのだ。
関連を考え、中央に棺の残骸ごと移送となり、そして..戻された。
この関で発見されたモノによって、東マレイラ人がこの世から消える事態は、見送られたという訳だ。
では、コレは何だ?と、なる。
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