第446話 絵札 ⑥

 次に花籠と女性の札だ。


「この三枚は、全部女の札だ。

 旦那の女難と同じだよ。

 この三つは一見、良い札周りに見える。

 けれど女を占って出てくる場合は逆になる。

 男の場合は、女難どころかいい気になって身を持ち崩すぐらいモテるだろうね。

 裏町に行く男なら嬉しい札だ。

 けれど女を占う場合は、よくない。

 嫉妬、憎悪、良くない人間関係、女に恨まれる札になる。」


 他の手札を山に戻して、その三枚を並べる。


「残りの札も、幸運とは言い難い。

 二度も出た墓石、塔、それから湖。

 勘違いしないでほしい。

 墓石だから死とは限らないんだ。

 縁起が悪そうに見えるが、この札は物事の終わりを意味している。

 結末と言う意味だ。

 ただし、塔は、良くない札になる。

 停滞、袋小路、行き止まりという意味になる。

 そして湖も一見すると綺麗だが、流れず留まるという意味だ。

 川や海のほうが良い札になるね」


 私の顔を見て、彼女はすまなそうに続けた。


「何度やっても、悪い札が抑えられないんだ。

 だが、絶望や死といった悪い事柄に押し潰される訳じゃない。

 良くも悪くも争い事に巻き込まれていくという見立てだ。

 この戦士の札がそれだ。

 敵も味方もわからない争いだ。

 考え方としては、常に公平であれ、だ。

 公平に、優しい思いやりを持ち、堅実に生きる。

 味方であろうと何であろうと、同調し物事を決めてはならない。

 争いの中心に身を置いても、それに踊らされてはならない。

 つまり、誰かの考えに同調するより、自分で決める事。

 そうしないと良くない結末だ。」


 それから彼女は札を再び混ぜた。

 良く混ぜて切ると、扇のように広げてみせる。


「さて、幸運の鍵だ。一枚引いて」


 考えずに一枚引き出す。

 絵札は、奇妙な生き物が描かれていた。

 鱗、長い体、角、髭が生えている。


「あぁ幸運の鍵にしては荒っぽい札だ。

 神の札だ。

 目が描かれていないのは、目が見えたら終わりって事。

 札の意味は色々あるが、これを幸運の鍵とするなら、先の札と同じになる。

 正直に振る舞えって事。

 後は、真実を見極めるまでは、他人を裁くなって意味。」

「真実を見極めるまで?」

「誰が悪いかわからないのに決めつけるなって事かな。

 正直に、正しいと思う事をして、諦めないでって意味だと思うよ。

 辛いことがあっても、生きる努力をすれば、きっとそれを神様は見ているって感じ。」


 その不思議な絵札に見入る。


「どうしたの?」

「とても綺麗で不思議な絵柄ですね」

「まぁね、白い魔女にはそれぞれ精霊とお話する道具があるんだ。

 私の場合はお婆ちゃんにもらった、これなんだけどね。

 旦那、買うのは決まったかい?」


 店内を物色していた男に、子供が呼びかけ卓から離れていく。

 私は、彼らの会話をぼんやり聞きながら、手元の絵札を見ていた。

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