第404話 屑入れ ⑤
死後、すぐに片付けは行われなかった。
どうも管理するニルダヌス達が手を出す事に、横やりが入ったようだ。
到着後、現状を聞かされたクリシィが呆れたようなため息をついた。
どうやら、くだらない言いがかりらしい。
神官の死に、皆、一言ありそうだった。
皆、管理番の家族もクリシィも、それから町や砦の者にもだ。
だからか、完全な部外者には話しやすいのだろう。
漏れ聞こえる材料は多く、想像は容易だ。
そして私としては聞くだけだ。
私達が意見を言うと碌な事にならない。
今の私は聞き役だ。
神官は風邪を引き肺炎で死んだ。と、ビミンは考えていた。
もちろん確かな話ではない。
着任してからあっという間。
症状が風邪のようだったと、雑談の合間に聞く。
ニルダヌスがクリシィに伝えた所によれば、町の医者は、元々何か患い弱っていたのではないかとの事だ。
弱り衰弱し死に至った。
つまり原因不明の死だ。
推測するに、共に暮らしていたニルダヌス達が元ではないかと疑われたのだろう。
ビミンが亡くなった神官を気の毒には思っているが、あまり良い感情を持っていないのも、その所為だろうか。
荷物がそのままで、部屋の片付けさえもしなかったのは、余計な言いがかりをつけられたくなかったのだ。
人が死ぬには原因がある。
だが、ニルダヌス達にとって神官が亡くなる事に益はない。
それにミルドレッドの町の医者も、アッシュガルト港の街の医者も、そして砦の医者も意見は同じだったそうだ。
毒ではないし病だろうと。
ニルダヌス達を疑うより、この地域全体でそうした原因不明の衰弱死が増えている事が問題だ。
なのに言いがかりをつけた。
その者は、教会に悪感情を持っているか、ニルダヌス達を排斥したいのか。
(感情だけで行動する愚かな人間なのだろう)
...しかし、神官様が亡くなってから時も経ち、誰も続いて伏す事も無かったため、こうして新たに巫女を迎えた。
片付けに手をつけても、それで病になる事は無いという訳だ。
それにビミンのお喋り、私が言葉を少なくしているからか、気を使って話しかけてきてくれる。
彼女が言うには、亡くなった神官様は、頻繁にアッシュガルトに通っていたそうだ。
地元住民との交流をもっていたようで、そこで風邪がうつったのではないかと言う。
何となくではあるが、彼女の推測が一番しっくりする。
城塞から頻繁に下へ向かっていた。
(だから死んだ)
「口を出すなら、私の考えに混ぜるのは止めて欲しい。
私が私を疑い続けるのは、とても疲れる」
亡くなった神官の部屋は、尖塔の側の小さな部屋だ。
引退した老神官の部屋は使わなかったそうだ。
部屋の掃き掃除はした。
(わかったよ、いつもどおり、僕が一緒さ。)
今日は目録を作りながら、荷物の整理に手をつけよう。
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