第403話 屑入れ ④
そんな私の体調はといえば、折れた足がやっと重みをかけられるようになった。
ただ、風邪の咳が残っているので、咳をする度に肋が痛い。
これはもう、どうしようもない。
肩は何とか外れるのが癖にならずにすんだ。
けれど重い物を持つのは駄目みたいだ。
つまり、今の私はご年配の方々よりも体力がなかった。
養生するのが一番だと諦めるしか無い。
なので私の一日は、鐘をつき、食事をし、雑用を手伝い、食事、鐘をつき、食事、風呂、就寝である。
この合間にお祈りの時間と休憩が度々入る。
まぁこんな具合だ。
ちなみに料理は管理人の美人な母娘の世話になっている。
その管理人の家族は、男性が獣人の二ルダヌス。
如何にもな強面の獣人男性ではない。
穏やかで礼儀正しい初老の男性だ。
背が高く手足も長く鍛えられた感じ、頑健そうでどこか兵士のような雰囲気だ。
初老としたが髪に少し白髪が混じっているだけで、老いは見えない。
ただ、口調も穏やかで孫娘におじいちゃんとよばれているので、あぁこの人は年齢が高いのだなと思うだけだ。
そして彼の娘、レンティーヌ。
彼女は見たところ殆ど人族種の容姿だ。
彼女の母親、ニルダヌスの妻が人族だったそうだ。
これは紹介の時に、ニルダヌスの亡くなった妻が東の出身だったと教えてくれたからだ。
この教会の管理番になったのも、妻の故郷が近いからという理由らしい。
そして孫娘のビミーネン、ビミンは軽量獣種の美しい少女だ。
ハッと目が覚めるような美人で、勝ち気な口調の子だ。
初対面から強気の口調で名乗ってきたのだが、何故か可愛いと思った。
何となく、ソワソワしている姿が子鹿のようだと思う。
怖がっているけど気になるのよ、と、その態度が言っているのだ。
つまり、彼女は口調を別にすると非常に友好的だ。
それから不在の父親の話は出なかった。
彼ら家族の事を根掘り葉掘り聞くつもりはない。
私も聞かれて話せる事が無いからだ。
それに親しくして、彼らにも何か影響があったらと思うと躊躇う。
どこかで、神殿の方々なら大丈夫ではないかと思っている。けれどそれ以外の人々と親しくした時、どうなるのか不安だった。
コンスタンツェ殿下の事以来、考えている。
ずっと考えている。
正解はわからないけれど。
***
軽い雑用といっても、教会の外回りに出るのも体力がない。
そこで動かずにできる仕事として、前任の神官様の部屋の片付けをする事となった。
前任の神官様は病死。
急な病で亡くなったという。
どのような人物かの説明は無い。
想像するに種族として病にかかりにくい
病死とあるが疫病ではなく、衰弱死の後火葬。
その灰は故郷に運ばれたが、私物はそのまま残された。
残された理由は、神官様の家族はなく出生地の神殿へと灰が運ばれたのだ。私物は塵以外は教会に寄付となる。
その目録作りと片付けが私の仕事だ。
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