第382話 幕間 牢屋にて ⑧

「内容による」

「彼女は神殿が身柄を保護していたい。

 だが、当分俺は監視地域に行かなきゃならん。

 かといって、そんな場所に連れて行ったらろくな事にならねぇ。

 俺以外の神殿関係者と一緒に都から出す方向で調整する。

 お前につなぎをとってもらったらモルデンに早めに話を通すが、詳細な状況は俺から出す。

 お前の報告はグリモアについては、無い。

 彼女の種族報告と保護だけだ。

 これもお前らが暴れまわったせいだからな。

 ここで守ってるのが一番だったのによ。

 目立つ場所だが、紛れさせるには一番だったんだ。

 それを無駄にしたのはお前ら、特にコンスタンツェ様なんだからな。 

 今回のように身分でゴリ押しされれば、この通り騒ぎになる。

 騒ぎになれば、彼女の存在に注目が来ちまう。

 もう公王は情報を集め始めているだろう。

 それも困るんだが何よりもだ。

 本人、小さなお嬢さんの心が不安定になると、グリモアがどう判断するかわからん。

 グリモアってのはな、他の人間が手にしたら、とんでもない事になるんだよ。

 あのお嬢さんの種族だからこそ、グリモアも彼女も安定してるんだ。

 彼女の種族特性って奴だ。

 ボルネフェルトを考えればわかるだろう?

 人族や他の種族が手にした場合、犯罪者か狂人に仕立て上げられて自滅だ。

 逆を言えば、他の種族が手にしていなくて幸いだった。

 例え、それが呪い故に、神から与えられたとしてもだ。

 俺を信じて口をつぐめって言ってんじゃねぇんだよ。

 特定の利益のためじゃねぇ。

 皆の為だ。

 俺やお前の為じゃない。

 人間を根絶やしにするような事へ対抗する為にだ。

 前に依頼した通りモルデンでの保護を念頭にして欲しいが、それは彼女の種族保護であってグリモアの対処ではない。

 グリモアに関しては、一切の情報を漏らさないで欲しい。

 保護してほしいが、深堀するな。

 都合の良い話に聞こえるが、あくまでも精霊種の保護の依頼だ。

 グリモアに関しては触るな、喋るな。

 統括とは直接、俺が面会して話をつける。」

「私の所で保護しては駄目なのか?お招きし歓待するぞ。

 特に西北の別荘は温泉もあるのだ。

 療養には素晴らしいぞ。そうだ、そうしよう!」

「奴隷根性を発揮してんじゃねぇよ、コンスタンツェ。

 他人の話を聞け、彼女の言葉を聞け、奴隷だってんなら、仕える主が不利にならん情報収集と行動を心がけろ」

「奴隷なんすね〜変質者じゃないだけマシ?あれ、言ってる事は普通ぽいけど、よく考えたら温泉に誘拐?ハンザイジャナイカナ」

「オロフよ、聞こえているからな」

「希望は通らない。

 コンスタンツェ、お前に関わりのある者共の顔を思い浮かべてみろ。

 あっという間に、公王に露見するぞ」

「あぁ、あの王様、輪をかけて変態だもんねぇ。

 あんな可愛い人形みたいな女の子見つけたら、大変、ぐぇ、旦那、でちゃうから、でちゃならんもの、でちゃうから!」


 奴隷根性で生き生きと偏執的なことを言い出す男。

 懲りずにくだらない冗談を言い自滅する、その護衛。

 それに苛つき無言で護衛を締め付ける男。

 ジェレマイアは、口を閉じた。

 言葉を尽くしたつもりだ。

 なのに、何でこんなに言葉が通じないのだろうか?

 これが呪いのせいなのか?

 元から個性の強すぎる面々だからか?

 なんとも徒労感がぬぐえなかった。

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