第368話 幕間 怒りの矛先 ②
そしてボルネフェルトの起こした事。
呪術。
それは知りたかった事に関係がある。
今、ジェレマイアは、国土をあげての腐土領域の封鎖、浄化の任についている。
封鎖は失敗の様相を見せ始めており、効果的な浄化の方法なり、共存の方向を探さねばならない。
今まで、彼が探っていた事柄と本質は同じ作業だ。
呪術とは何かを探求する事。
過去の焼き払われた数々の文献を探す事。
呪術の自体の復活だ。
その呪術とは、感化の力である。
支配者層は呪術という技術を恐れたのではない。
自分たちが扱えない民衆管理を行える洗脳手段を恐れたのだ。
さて洗脳(敢えて洗脳という言葉を使う)とは、人の手による技術だ。
教育訓練にて矯正をする。
医療技術、薬物や外科手術にて行う。
これならば王国の支配者層が共有できる方法だ。
だが呪術の感化は、その共有ができない。
一部の才能ある者が所有する知識と技術、普通では習得できない特殊なものである。
実際、彼らから権利を奪う為に、宗教統一という争いがあったのだ。
影響力を恐れ邪法としたのである。
愚かな事だ。
まぁそれはいい。
ジェレマイアがつらつらと考えていたのは、洗脳と感化だ。
感化の力とは呪に限らず、民衆を管理する有効な手段だ。
獣人という種の本能を管理する為に、軍が使用している洗脳もそれである。
洗脳と言い切ると非常に非人道的に思えるが、この本能管理を施さなければ集団行動がとれないのだ。
これは生き物としての違いであり、彼ら自身が他の種に歩み寄り生きていこうとした結果の選択だ。
なので洗脳ではなく加工という言葉に置き換えて、軍隊ではあたりまえの事となっている。
これを施さないと、一昔前まであたりまえとされていた、序列を決める戦いを幾度となく繰り返さなければならない。
出兵や軍の再編をする度に、一大筋肉野郎暴力祭りが開催される事になるのだ。
この戦闘種への本能管理の理由を知ってから、ジェレマイアは差別ではなく種族として彼らとは根本が違うのだという事を理解した。
力で解決が正義となるのは、土台の違いで短慮なのではない。
人族と獣族の考え方の違いをよく知らないと摩擦の原因になるが、それが種族としてまったく違うのだとわかれば理解もすすむ。
と、考えがそれた。
つまり獣人とは、人族で言う男同士での同位は認めないのだ。
友情?
確かに友情はあるだろう。
だが、雄の同位は無いのだ。
あくまでも力こそ全てという原始的な雄の縄張り争いがある。
何の話か?
何の話でもない。
現実逃避していた。
その始まりは、本神殿からの急使からだ。
ジェレマイアが寝る間も惜しんで働いていると、本神殿から急使が来たのだ。
『至急、本神殿へ戻られたし』
神殿長から助けて(涙)のお手紙だった。
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