第358話 幕間 天罰だと思う ③
そんな苦労も知らぬげに、コンスタンツェは機嫌よく部屋に入った。
頭髪を多少毟られ、この後、説教と叔父の折檻がまっていてもだ。
まぁその折檻の時に、オロフも説教されるまでが定石である。
定石といえば、ナイダ・ハヌス神に怒りをかうと、罰として男は醜い獣に変えられる。
醜い豚とか狒々とかである。
大体が、スケベ根性をだした男が豚とか狒々になる。
そして正妻にボコボコにされてモガれる。
何がって、ナニをだ。
多分、淫行を禁じる教えだろう。
それを子供の頃から聞かせてきたのは、何番目かの姉の一人だ。
きっとあの姉は男が嫌いなのだろう。
などと現実から意識をそらしていると、コンスタンツェは少女に話しかけ近寄る。
ふと、こんな毒蜘蛛みたいな男を少女に会わせるとか、神様的に駄目なんじゃね?
と、再びオロフは脳内の想像女神にお伺いをたてた。
再び女神は首を掻き切り、ついでに嫌そうに口を曲げて見せる。
おまけに女神の顔が、何故か業突く張りの母親にすり替わる。
『やべぇ、なんかやべぇ』
不必要に少女に何かしないように、止めないと不味い。
ふざけて女神云々をもちだしていたが、母親の幻視が見えるようなら、これは不味い兆候だ。
父親も言っていたが、母親の声が聴こえるなら本能がヤバいと告げている時だ。
何しろ恐怖政治を商会に強いている母親だ。
自分の商会に悪影響があるようなら、実の息子も手斧で始末しかねない。
『悪いのはコンスタンツェ様っす』
と、大人気なく言い訳をする。
そして少女が苦痛を覚えるようなら、すぐさま引き離そうと雇い主を注視した。
立っている少女を長椅子に促し、自らも近くに座る。
そうして自己紹介やら適当な事を話ながら、コンスタンツェは彼女に手を伸ばした。
少女は驚いたように身を引く。
『いや、駄目でしょ。初対面のオッサンが触るとか』
突っ込みたいが、目的が読み取りだとわかっている。
苦痛が見えるまでは、止めない。
『そっちの興味が皆無だから安心..じゃないな、神様お許しください』
コンスタンツェも相手が警戒しているのを感じたのか、ぺらぺらと意味の無い話を垂れ流している。
審判官などという身分は言わず、北の災害の事を知りたいとかなんとかだ。
それに生真面目な調子で少女が返す。
普通の女の子っていいねぇ、等とオロフは入り口付近に立ちながら気配を探る。
まだ、神殿兵は来ない。
きっと神殿兵団長が不在だからだ。
北の災害対応に出立したばかりである。
東南と北の両方向へと多くの神殿兵と主要なまとめ役が出払っている。
今、残っているのは穏健派と言えばいいのか、武闘派ではない。
きっとコンスタンツェの愚行を、まず王城へと問い合わせているのだろう。
『まぁ正解じゃないよね。北に向かった兵団長さんなら、即座に武力排除しちゃうのにねぇ』
それがわかっていての、無理やりな面会でもあるのだ。
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