第335話 落ち葉の下 ②

 私達はフリュデンを見下ろせる、水神の丘にいた。

 今、アイヒベルガーの一族は、フリュデンの公会堂に腰を据えている。

 そこにて一族の復興をはかろうと日々働いていた。

 このままフリュデンにアイヒベルガーの本拠地を作るか、トゥーラアモンを復興するかで、氏族会議も続いているようだ。

 元々、フリュデンも街としての機能は維持されている。

 古くは近隣一番の城塞都市でもあった。

 気がかりであった呪術方陣の残骸も霧散。見た限り、人に害悪を植え付けるような代物は無くなっていた。

 他にも儀式部屋がトゥーラアモンにて壊れたため、通常の地下水脈と下水になっている。

 これなら暮らし続けても問題はない。

 元々の住人が失われた事の処理はせねばならないが、それはトゥーラアモンも同様だ。

 そのトゥーラアモンは、例の抜け殻となった怪物の遺骸に国が興味を示しており、その調査が済むまでは氏族が戻る事も叶わない。

 ならばフリュデンを手直ししたほうが、安上がりでもある。

 だが、トゥーラアモンの青馬侯であり、青馬侯が化け物を退。フリュデンではなくトゥーラアモンの再興を。と、言う意見も勢いがあるそうだ。

 その忙しい最中に、ライナルトは私達と一緒にいる。

 私とカーン、そして祭司長と共にだ。

 地の神の痕跡を見にだ。


だってよぉ、いつもだったらチャッチャと見つけてるんだよぉ。何だよ、その馬鹿にした目つきはよぉ」


 トゥーラアモンでは、神の痕跡を探せなかったようだ。

 何故なら、神の痕跡どころか、神に戻った蠎の抜け殻が横たわっているのだ。

 神官の目が焼き切れるほどの眩しさで、地の神の慎ましやかな痕跡が霞んで見えなかったのだ。


「たまたま兵士がフリュデン近郊の詳細地図を作成中、発見したようだ」


 と、カーンはヤレヤレと頭を振った。

 それに子供のように唇を突き出し、祭司長は頬を膨らませた。


「たぶんだが、子供の身を考えて、神の方からお寄越しになったのだろう」

「では、何故、私達はここに?」


 私の問いに、ジェレマイアは肩を竦めた。


「手抜きしたわけじゃねぇよ。見つけても、子供に触れなかったんだよ。」


 崩れた神像を迂回するように、その後ろに回り込む。


「あれが痕跡だよ」


 白い小石が、草地の緑の合間から見える。その石は草に半ば隠れながらも、白く陽の光りに浮いて見えた。

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