第326話 魂の底 ④
『物事ってのは、繋がっていないようで繋がっているもんだな。
それにあんまり気にしちゃいなかったが、人の運不運ってのは予想がつかねぇや。
だがこんなに引きがいいのは、お前のおかげだな。』
『どういう意味だ』
『俺の運も悪くはないが、お前の強運には負けるって話だ。
お前の運をこの子にも分けてやってくれ。
俺じゃぁ呪いが邪魔しちまうからな。
可哀相にな、こんな体中に誓約が張り付いて。痛くて苦しかったろう』
『...』
『えっ?
お前ら、馬鹿でしょ。
可愛い女の子が入れ墨なんぞするかよ。
これは誓約紋っていってな、神や魔なんぞに誓約をかけられた者に浮き出るんだよ。
大昔でいう生贄の印だ。
何だよ、野郎どもが動揺しても、ぜんぜん可哀想じゃねぇんだよ』
『...』
『やっぱり、馬鹿だよな。
俺、お前らの顔も見るの嫌になったわ。
嘘でしょ、男の子だと思っていただと?
そいで、そういう田舎の風習だと思ってた?
何処を見て言ってんだよ。
頭どころか目も腐ってんのかよ。
こんな可愛らしい男がいるかよ、神殿で預かってるガキだって見たことあるだろうが。どんな可愛い顔してようが、男女の区別ぐらい』
『お前のところの悪魔みたいなガキどもを引き合いに出すな。あれは間違いようがない。山賊が逃げ出す手並みで金を集りにくるガキどもだ』
『そりゃ、お前ら小遣いはずむからイイカモなんだよ。
まぁいいや、だがよーく思い出せ。
お前らのスカスカの脳味噌でも思い出せるはずだ。
この子に会った時、最初から入れ墨があったか?
因みに、その他の村人に、こんな入れ墨があったか?』
『...』
やっと瞼が開く。
霞む目には布張りの天井が見えた。
体は脱力と痛みが和らいでいる。
少し楽になっていた。
瞬きを繰り返すうちに、穏やかな明かりと暖かい布団に包まれて横になっているのがわかった。
「しつこいなぁ、どこが男に見えるんだ。
お前ら、本当におっぱい信者だよな。
牛みたいな胸がねぇと女じゃないとでも言うのかよ。
うちの巫女頭のばあさんに、同じことを言ってみろ。
生きたまま毛を毟られるぞ」
顔を横向けると、そう言い切った神官と目があった。
朦朧とした中で、ずっと喋っていた声音が途切れる。
「俺は違うからな」
そんなカーンの弁明を他所に、神官はゆっくりと口を閉じた。
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