第325話 魂の底 ③

『お前らと同じ呪いだ。

 雑にお前らを縛っているのは、お前らなんぞどうでもいいんだ。

 だが、この子は違う。

 謂わば神の愛の深さだ。

 罰当たりだから呪われたんじゃない。

 やっぱ、お前ら死ね』

『神官が死ね死ね言うな。しかし、覚えがない』

『それだよ、それ。

 魂が虫食いだらけだって言ったろ。

 お前ら忘れてんだよ。

 呪われて、頭ん中がスカスカになってる。

 なに?知らねぇよ。つーか自力で思い出せよ。

 こういうのはな、自分で思い出さなきゃ意味がねぇんだよ。

 神が関わった事ってのは、良い悪いは別にして、本人が試されてんだよ。

 何だよ、感じられねぇから嘘だってか?

 馬鹿言ってんじゃねぇや。

 おい、よーく聞きやがれ。

 お前たちはわからない。

 ならば、他人が何を言った所で、これからの人生に影響はない。

 言い換えれば、強力な守護だ。

 その身の不運だろうが死だろうが、神が何かをしたとしてもわからねぇんだからな。

 だから、お前らの呪いが、あの殺人鬼のものだろうと神のものだろうと、俺は何ら手出しを急ぐ気は無い。

 だってお前ら、何か不都合があったか?

 無いだろう。

 じゃぁこの子はどうだ。

 神が約束を刻んでいる。

 これは明確にこれからの人生を曲げる力だ。

 これを刻まれて忘れているわけがない。』

『こいつは、覚えているのか..』

『俺が神器を渡したのは何故だと思う?

 お前たちは、行方知れずになるか、傀儡になる。

 つまり死ぬと思ったからだ。

 神器は女子供の言葉にしか答えないが、お前達を他の者の餌食にならぬようにするだろうと考えた』

『つまりあれも呪物か』

『そうさ。

 神器の餌食なら、ボルネフェルトの餌にはならない。

 そうしてお前達は帰ってきた。

 神器のおかげだと思っていたさ。

 俺もしくじったって事だよ。

 まさかな、まさかアタリを引くとは思わない』

『それは』

『信じられねぇか?

 呪いってのは、神が仕掛けた場合、意味が違ってくるんだよ。

 人間が人間を恨んで呪うようなもんじゃない。

 忘却は守護であり、束縛は祝福ともなる。

 だが、何れにせよ恐ろしい力が注がれるんだ。

 そしてな、この子の場合は、よくない。』

『よくないとは』

『俺は神官としては一番優秀だって思ってる。うぬぼれじゃなくな。俺は生まれた時から呪われていたが、同時に強力な守護ももらっている。だから、今、生きている人間の中では一番の神官だ。

 その俺でも手出ししたら、危ないってわかるんだ。

 俺がじゃなくて、この子がだよ。

 まぁ俺のところに預けてもらえれば、時間をかけてどうにかするが』

『..死ぬのか?』

『死なねぇし死なさねえよ、クソが馬鹿言うんじゃねぇ。

 てめぇらクソ野郎共の寿命なんざバカスカ削ってもらって、この子は長生きしてもらうんだよ。本気マジでお前らが死ね』

『それは構わんが、俺達が死んだ所で呪いが解けないって言ったじゃねぇか』

『それなぁ、役にたたねぇ奴等だぜ。代わりに呪いが解けるまで、お前らには色々働いてもらうからな』

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