第302話 幕間 呪われし男 ③

「ん?お前らどーした。

 何、任務失敗しちゃって焦ってる?

 まさかね、そんな事ねーよな。あれ、怒ってる?」

「説明しろ、どういう事だ?」


 それに威儀を正すと、ジェレマイアは答えた。


「元々、ボルネフェルトの首があってもなくても、あの男の場合、死亡の確認は無理だ。

 お偉方は認めないが、私が視た限りアレは元々、死人だ。」


 口を挟もうとするカーンを笑って押し止めると、ジェレマイアは続けた。


「貴様に最大限の助言助力を与えたのは、ボルネフェルトをどうにかする為ではない。

 五番目の処刑が一番の目的だったからだ。

 国も我々神殿も、もっと穏便に済ませたいとは思った。だが、無理なものは無理だ。

 だから、彼を連れ戻せという命令ではなかった。

 必ず首を持って帰れ、殺せという命令だ。

 彼が利用されないようにする事、死体を含めて使用されないようにする事が重要だったのだ。

 だから、貴様らには、ボルネフェルトが及ぼす影響が必ず出ると踏んだ。

 今までの奴の行いからすれば、お前たちも消えるか操られる可能性もあったからな。

 その対策に渡した。

 ところがどうだ。

 お前たちは、呪われている。

 ボルネフェルトではない。

 私の知らない古い神にだ。」


 一息に喋った祭司長は、椅子に再び腰を下ろすと指を組んだ。

 思案するように、男達を眺める。


「問題は、その呪いがわからないのだ。

 この私がわからない。

 お前たちの魂に糸がからんでいると思えばいい。

 それが奇妙にお前たち全てに絡んでいる。

 先程、神殿長へ届けるように渡した智者の鏡にもだ。

 それぞれに幾重にも糸が絡みついて、その先は消えている。

 どこかに繋がっているのだとしても、今の私には視えない。

 私よりも強い加護が、加護という言葉は適切ではないが、強い力である事は確かだ。

 つまり、我らが主よりも強く古い神が憑いた。

 これに似たモノを私は知っている。

 他でもない、私にも同じような代物が絡んでいるからだ。」


 そこでいつもの調子に戻ると、彼はニンマリと笑った。


「お前らも俺と同じ呪い憑かぁ、兄弟。

 ボルネフェルトが邪神の呪いでもお前らに擦り付けたのかもなぁ。

 よかったなぁ、お仲間だぜぇ!」

「どういう意味だ?」

「俺が呪われてるのは知ってんだろ?

 有名だよなぁ、が今では神殿の祭司長だぜ。呪いやがった奴らはザマァみろだ。

 はいはい、わかったわかった。そんな目を血走らせんなよ、兄弟。

 俺には偉大な主の加護がある。

 いわゆる魂ってのがみえちゃうのよね。

 神官の能力な。

 そこにモヤモヤ変な縄が絡みついてんだよ。

 カーン、お前にはぶっとい荒縄が何本も絡みついてるって思えばいい。

 他の奴らは紐だ。それが命綱みたいにつながってやがる。

 その先っちょがよ、どこに繋がってるのか視えない。

 ソレだけじゃなくてよ、お前らの魂の言葉がよ、虫食いだらけなんだよ」


 ぼろぼろに喰われた感じでさ、まぁよく、..。


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