第268話 腐った魂 ③

(そうだね。

 僕は優しいから教えてあげる。

 手遅れだけどね。

 もう、皆、骨になってしまうよ。

 可哀想だね、オリヴィア。

 気がついていないのかい?

 簡単な話じゃないか。

 シュランゲの呪術師は死んでいる。

 残る呪術師は、あの女だ。

 では、あの女が覡を盗んだ。

 さて子供は火種であって燃料ではない。

 大量の燃料は用意されている。

 燃料、大勢の生贄は何処にある?

 ただし蠎の餌以外に、だ。)


 婆様は、奥方の事を


(何もできないと言った?

 君は間抜け、いや、面白いよ。

 フリュデンの住人と集められた人手。

 彼らは何処にいるのかな?)


 そんな、馬鹿な


(フリュデンは、壊れた過去の呪術方陣が残されていた。

 シュランゲの呪術師は、地下水路をそのまま流用していた。壊れた呪陣は動かして無いから、おかしくならなかった。

 けれど、女が下手ないじり方をした。

 流用しようと城塞内の呪陣を繋げた。

 調律もしていないからね、狂ったまま動いた。

 彼らの言動に自制心が働かなくなっていたのも、壊れた呪術方陣の影響もあったんだ。

 狂った音色の楽器を聞き続けたら、誰だっておかしくなるだろう?

 さて、場所だ。

 僕は知っているけれど、きちんと踏襲しないと君が失うことになる。

 だから、君はちゃんと遊び方の決まり事を踏襲しなければならない。

 さぁどうぞ?)


 儀式地は何処だ?


(地面の下だね。

 オリヴィア、焦っては駄目だよ。

 本当なら教えるところだけれど、僕は優しいから忠告しよう。

 こういう時は、示唆を求めるんだ。

 君もわかっているように、答えだけを問うと、君が失う事になる。)


 失う?


(忘れちゃ駄目だよ。

 今は、僕が表にでているから、忠告するよ。

 グリモアを使った神の遊戯は、とても残酷で残忍なんだ。

 例え君が供物であり、特別な女の子でもね。

 君はいつも試されている。

 だから、力を使う時は、必ず逃げ道を用意するんだ。

 怖いという感覚を忘れてはいけない。

 もう一度、やり直しだ。)


 理を乱す儀式は、どんな条件の場所でするんだ?


(祀られる事なき神。

 埋葬に使われた土。

 悼まれる事なく放置された骨。

 陽射しの射さぬ場所、かな。)


 では、その条件に当てはまる最適の場所とは?


(地下墳墓か地下遺跡だね)


「侯爵様方の墓地は何処に」

「案内しよう」


(本当の呪術者とは、理を調律できる者なのさ。

 君には資質があるよ。

 それにしても面白いなぁ。

 君とお話すると、あの女とどうしても比較してしまうね。

 君は特別を嫌うのに、あの女は特別にこだわった。

 君は孤独だけど、拒絶はしていない。

 あの女は人の中心にいたいけど、他者を拒否している。

 今更だけど、あの女が目指しているのは何だろうって思わない?

 僕はね、ナーヴェラトより、あの女が恐ろしいよ。

 だってそうだろ?

 化け物は約束を破ったら、食べに来るけど。

 あの女は、腹なんかすいていなくたって、我が子を親を殺し、隣人を生贄にして平気なんだよ。

 なんて醜くて腐っているんだろうね。

 人間は、なんて醜いんだ。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る