第216話 真実という名の欺瞞 ④
「嫡子はどう考えていたんだ?」
「イエレミアスは、納得した。
きっと明日を信じたんだ。
アイヒベルガーとしての明日。
姪の人生、弟の事。
人として義務を果たそうとした。
俺とは違う。
俺は、俺は」
『こどもはぁ短命種だったからぁ
すてられたぁ
グーレゴーアは死んだとおもってたぁ
うそつき、うそつき、あばずれのうそはぁ
おもしれぇよなぁー』
「..短命種の子供、あたりまえじゃないか」
「順番はこうだ。
侯爵は廃嫡理由を探していた。
グーレゴーアは、シュランゲの女と婚姻をしたがった。
嘘つき女は、嘘を本当にしたかった。」
思い当たる事をつなげる。
「馬鹿な、なんて馬鹿な」
「嘘をそれぞれついたんだ。
産まれた子供は、当然、亜人の要素が濃い子供だった。
だから女は嘘を本当にするために、子供を捨てた。
グーレゴーアは、死産だと聞いた。
嘘つき女は、夫の嘘を詰った。
彼奴が欲しかったのは、長命種である子供、自分の正しさの証明だ。
長命種ではない子も夫もいらない。」
「奥方も、長命種ではないだろう!」
「嘘つきは、エリカと自分が同じだと思っていた。
嘘をつき続けているうちに、村生まれなことも、実の親さえも認めなくなった。
自分が特別であることにこだわった。
子供なら許された。
だが、大人になってまで、そんな虚言は許されない。
これは俺達、村の皆もよくなかった。
あんな風になるとはおもっていなかったんだよ。
下の子供らにも優しい奴だったんだ。
それが、あんな。
侯の使いでグーレゴーアが村に訪れるようになると、外に出たいと考えるようになった。
婆様は、外見上は長命種の彼女を憐れんだ。
だから、自分の跡取りとしようとした。
けれど、グーレゴーアの手をとると、さっさと外に出ていった。」
「侯の使い」
「シュランゲは侯の支配地だ。
知らぬ訳はない。
すべて知っていた。
だから、身動きもとれない。
息子達の事、孫の事、嘘。
嘘つきは、騙されたと侯に訴えた。」
「侯爵殿は..」
「嘘つきは、自分の子供を認めなかった。なのに、侯爵に自分たちを家族だと認めろと訴えた。
認めなければ、アイヒベルガーとシュランゲの秘密を暴露するとな。
もちろん、侯は取り合わなかった。
孫を放り出した女に慈悲は無い。
侯の方が嘘に慣れている。
彼にしてみれば、それまでの人生で腐るほどいた、要求ばかりしてくる輩の一人にすぎない。
そんな女を選んだ息子、否、甥は一氏族にすぎない。
それも次代は平民のレイバンテールだ。
騙されて自分の子供を捨てた事にも気が付かないのかと、見放した。
そうして侯爵は、孫の安否をイエレミアスに託すと、彼らから顔を背けた」
「侯のお孫様は」
「婆様と踊っているよ。あの井戸に投げ入れられて、あっという間に死んじまった。
今では、グーレゴーアも知っている。
女の嘘と自分の業に。」
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