第174話 瞳の中に ②

 亜人と一口にいうが、数種に分ける事ができた。

 それはオルタスの他の人間種でもだ。

 人族、獣人、亜人と大きな分類後、そこから更に複数に分かれる。

 人族も長命種人族と短命種人族に大きく分類するが、そこから更に細かく学問的に分ける事もできた。

 獣人種に至れば、更に複雑に分かれる。


(補足をいれようか、これはの得意な分野だね)


 止めて欲しい。


(しょうが無いなぁ、じゃぁ一言だけ。

 オルタスの人種の違いは、なんだ)


 臓器?


(解剖するとわかるけど、君にあってエリという子には無い。反対に、エリという子にあって、君には無い臓器がある。

 だから、純粋に種として本来は混血する事もままならないほどの違いがある。

 まぁ、これは知識で、知りたければ、知識になる。

 おっと、そんなに嫌がらないでくれ。

 さて、このエリという子は、でも、だ。)


 話を戻そう。

 オルタスの人間は、獣人種以外、顕著な外見上の違いは無いのだ。

 その獣人種も擬態によって、同じく、全くの異相は滅多にいない。

 ただ、それでもこの人は、何の種族だろうかと推測する事ができる。

 それは手の指だ。

 亜人の指は、他の種族より少ない。

 また、多くが体の大きさも、人族より小柄だ。

 エリの指は長命種と同じであり、体も子供としては長身だ。

 私自身が亜人と長らく思っていたのは、この条件の所為だった。

 人族種の成人までの成長速度は殆ど変わらない。

 特殊な種族以外は、成人後の寿命が違うという事だ。

 そしてエリが長命種族と判断したのは、虹彩の色味もある。

 亜人は、どの種族と交わっても亜人種の子供が産まれる。

 そして亜人の子供の瞳は、薄いのだ。

 長命種族の特徴として、どのような瞳に生まれても濃い色合いか、鮮やかな色が混じる。

 エリの瞳の輝き、銀の混じった色合いは、亜人の子供には生まれない。

 たとえ濃い色だとしても、私の琥珀色までだ。


「お嬢さん、君は誰なんだい?」


 侯爵の騎士は、エリの頭を撫でながら問いかける。

 厳つい割に優しげな雰囲気の所為か、エリは黙って撫でられていた。


「暫く、我々の所で預かる事になるでしょう」

「それは構いませんが、この子と同じ村の者がいるそうですね」


 サーレルの問いに、男はエリを見つめながら答えた。


「この街から、更に北東に大昔の城塞跡があります。今現在は、町になっているのですが」


 彼は言葉を選ぶように、いったん口を閉じた。


「侯爵様の甥で、レイバンテール殿が、その町長まちおさをしております。彼の奥方がシュランゲの出身です」

「奥方のお身内も死人の中におりますか?」

「いいえ、奥方は身内共々、嫁いでいらしたはず」

「それは幸いでしたね。では、この子を見せれば直ぐに身元も割れましょう」


 サーレルの言葉に、騎士は顎を掻いた。


「そうしたいのは、やまやまなのですが」

「おや、何かあるのですか?」


 もちろん、粛清者に自領の内幕を漏らしたくはない。

 騎士とサーレルは、微笑みながら睨みあう。

 それに水をさしたのは、城からの使いだった。

 レイバンテールの奥方に、お会いするのは、まだまだ先になりそうだった。





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