第123話 廃村 ④
通り過ぎた間道に戻り、北へと踏み入る。
微かな上り勾配が蛇行していた。
それも徐々に東に曲がり、落ち葉の下、すこしだけ石畳が見えるようになった。
今度も道が途絶えるかと心配していたが、どうやら旧街道の敷石がしっかりと残っている。
安堵のまま進む。
時間は午後を少し過ぎたあたりだ。
だが、暗くなる前に休める場所を準備しなければならない。
騒々しい音をたてる一団は、馬を二頭並べて進む。
道らしい道になっていた。
先に手勢二人、次に私とカーン、他に寡黙な大男二人と厳しい雰囲気の男二人が続く。
先の手勢二人は、従者としていた男たちで、一人は私を迎えに来た男だ。
どうやら上下関係は、カーン以外は同等のようである。
ただ、先頭の二人はこの集団の中では若手のようだ。
もちろん顔貌その他、見ないようにしていた。
下手に見入って、怒りを買いたくない。
そんな総勢八人に、荷駄を運ぶ馬が二頭の道行だ。
私は当然、従者というか若手二人の手伝いをしながら同道するのだと思っていた。
しかし彼らは、私の手伝いを良しとしなかった。
道案内以外で、用を頼まれる事は無い。
子供でも働くものだが、彼らはその子供を働かせる事を嫌がった。
彼らから見れば頼りなく見えるのか、はたまた種族として何か違うのかも知れない。
それでも道案内には信を置いてくれているようだ。
この扱いはありがたい。
女ひとりで男の集団に混じる事は、普通なら考えられない。
だが頭領たるカーンが、子供を餌食にする
彼がいるかぎり、この集団の中では普通の警戒で済みそうだった。
これは爺達もそう思ったからこそ、彼らと一緒に村をでるようにしたのだろう。
人殺しで暴力に生きている者ではあるが、その点だけは何故か信頼できると私自身も思っている。
子供を身ぐるみ剥いで売り飛ばす..事は無いはずだ。
どれほど悲惨な想像をしても、この男、カーンが、そんな
私が、甘いだけかもしれないが。
そんな無駄な事を考えているうちに、視界を埋める木々が開けた。
道は散在する木造の家々に続いている。
村だ。
殊更ゆっくりと馬を進める。
それまで雑談をしていた男たちも、剣に手を添えて無言で進む。
うっすらと雪をかぶる家々は、遺棄されているのが見て取れた。
だが廃村だとしても、傷みも廃れ具合も軽微だ。
一人二人、残された村人が出てきそうだ。
もしかしたら
遺棄されているだけならば良いが、寝静まった後に賊に殺される末路は嫌だ。
まぁ彼ら武装した中央の男たち、それも大型獣人を殺すには、他種族が蟻のように
廃村の中央、井戸がある場で馬をとめる。
壊れかけた鎧戸。
壊れた樽に、閉まらない扉が風に煽られている。
家々は軋み、薄暗い屋内が見えた。
不気味だ。
この村に泊まりたくないな、うん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます