第4話 余所者

 余所者の前では怯えを見せない。

 肉食獣に背を向けたら死ぬ。

 単純な道理だ。

 だから、私も鷹の爺の孫も、空模様を気にした風に仰ぎ見る。

 端からは呑気な田舎者だ。


「一昨日、館に兵隊が来た。

 お館様らが爺ちゃん達を呼んで、それから戻らない。

 婆ちゃんが、父ちゃんらを地下に入れた。」


 私が頷くと、彼は不安を恐怖を目に乗せて囁いた。


「婆ちゃんが言ってた。

 お館様も爺ちゃんも帰ってこない。

 次に来たのが奴らだ。

 奴らは蛇の兵隊だって。」


 何気なく振り返り、地図を片手で話し合う集団を見た。

 大男を含めて騎士が五人、従者?二人。

 いずれも帯剣している。

 そして、農耕馬とは異種とも思える巨大な軍馬。

 馬も人も大きく物々しい。

 そして、血生臭い。

 武装集団としては少人数だが、村を焼くには十分に思えた。

 戦闘慣れしていそうだし、領主兵がいくらいても、村民虐殺ぐらいなら遊びにもなるまい。


「爺ちゃんも御館様もしょうがないけれど、蛇の兵隊は無事に返さないと困るから、姉ちゃんに頼めって」


 そう言ってから、憎々しげに男達を睨んだ。


「余所者なんて、森に喰われれば良いんだ。どうせ、帰ってこなくても分からないよね。

 蛇の兵隊なんて、婆ちゃんの昔話だよね」


 強まった雨脚に、開こうとした口を閉じた。

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