第4話
翌日も休みで運よく完全オフ。ひょっとして今までの目が回る忙しさはこいつのせいだったのか?
とにかくこいつをなんとかしないと。あの霊能者はあてにできないしどこか専門的な場所に行こうともしたのだが、ネットで調べただけで呪い殺されそうな視線を向けられてはうかつに動けない。
というわけでどこにも行けないまま。助けを呼ぼうにも周りにはこの手の話を信じてくれなさそうな奴ばかりで相談しようもない。
じーっと幽霊をにらみながら対処法を考えているとまた
「ズゾゾ」
と口から出ている紐を吸い込みやがった。
「痛ッ……吐けよ」
無視。
一日経ってわかったことがいくつかある。
ひとつ、この紐が吸い込まれると俺の体に何かしらの悪影響を及ぼすこと。それは頭痛だったり悪寒だったり、どこかの関節が痛んだりと様々だ。
ふたつ、この紐はずいぶん長いということ。見ている限りまだまだ終わりそうにない。
みっつ、幽霊はこの紐を目当てにくっついているらしいということ。
これらの観察結果から俺が出した答え。それは「この幽霊は俺から出ている紐から何かしらの栄養を得ており、この紐が吸い尽くされた時俺は死ぬ」というものだった。
死ぬだなんて発想が飛躍しすぎだと笑われるだろうか。しかしそういうことは、幽霊に体から伸びている紐を吸われそのたびにどこかが痛む、という経験をしてから言ってほしいと思う。目に見えるとはいえタイミングは向こうの気分次第。地味に痛いそれに怯え、幽霊自体にも怯え、ここまで保っている俺の精神力を褒めてほしいくらいだ。
それになにより幽霊が紐を吸い込むたび「至高の幸せです」という表情を見せるのがとてつもなく恐ろしいのだ。
見たことがあるだろうか。真夜中に柳の木の下に立っていてもおかしくないような非生命体の、今にもとろけそうな至福の表情を。それはそれは恐ろしいものだ。
今のところポルターガイストとかも起きてないし、他の物質には干渉できないのかもしれないが、そんなことは些細なことだ。何しろ俺本体に直接危害が加えられているのだから。
なんとしても俺のこの紐――生命力のようなものだろう――をすべて吸われる前に対処せねば……!
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