図書館
綿密な調査は、地味な作業の連続だ。でも、派手な怪盗の活動のためには、こういった地味な作業の積み重ねが肝要である。フィクションの中では、派手な大立ち回りで盗み出す過程ばかり描かれるものだが、それはフィクションの中だけである。警備状況を詳細に把握していないと、警察と対峙するどころか、バイトの警備員に捕まって終わりである。
岬玲奈は、今日は朝から図書館に籠っていた。図書館の本を読む分には、本の購入履歴などの足がつかない。それに無料である。税金と、運営に携わる人々に感謝である。最新情報を調べるにはインターネットが強いが、より正確な情報だとか、情報の鮮度が必要ない情報を調べるには図書館のほうが便利だ。
「何読んでるの?」
後ろから声を掛けられた。
「……楓。今日休みだっけ?」
樫本楓だった。その右手では、分厚いハードカバーの本を持っていた。
「図書館で調べもの。そういうあんたはどうなのよ」
特に断りもせず、楓は玲奈の隣に座った。読んでる本を覗き込もうとするから、玲奈は楓の頬を軽くビンタした。
「ちょっと、痛いんだけど!こちとら公務執行妨害できるんだぞ!」
「警察法第二条。その権限を濫用してはならない」
「嬉々として窃盗罪を犯してる人に言われたくないんだけど」
「怪しきは罰せず。警察ならちゃんと立件してからそういうの言ってね」
「言ったね?絶対私が捕まえて見せるんだから!」
「分かった分かった。図書館では静かにしてくださいね~」
そのまま玲奈は席を立ってしまった。
「ちょっと、もう行っちゃうの?」
「楓が来ちゃったし。やりづらくて仕方ないよ。調べものは終わったところだったしね」
玲奈は、読んでいた本……「怪人二十面相」を、元の棚に戻した。
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