大怪盗様の作戦

 岬玲奈は、今日も自室でぐうたらしていた。一日中ゲームしているのも飽きて、ベッドに寝転びながら(楓に買ってもらった)漫画を読んでいる。

 しかし、急にドアが開いたので読んでいた漫画が顔面に落下してしまった。

「ドアはノックくらいしてよ!」

「何よ。思春期の男子じゃないんだから。」

 部屋に入ってきたのは数日前から同棲中の樫本楓。謝る気など微塵もなさそうである。

「私だってプライバシーっていうのがあるんだよ!」

「あー、確かに大怪盗様の作戦が警察にバレたらまずいからね。」

「違うし。そんなんじゃないし。」

「そうそう、聞きたいことがあるの。」

 まるで玲奈の言葉が聞こえていないかのように、楓は一方的に捲し立てる。

「これ、どういうこと?」

 楓が玲奈に突き出したのは、一枚の写真。「怪盗レイナの予告状」の資料写真である。

 それを見た玲奈は顔を顰めたまま。

「どうって、それ読んだら分かるでしょ?怪盗レイナは国宝展に盗みに入るってことだよ。」

「へえ。私に逮捕されてもいいの?」

「逮捕なんかされないよ。……と思うよ。私は怪盗レイナは知らないけど!レイナくらいの怪盗ならあんた程度の警官が捕まえられるわけないよね。」

「……本当に、そうかな?」

 楓は得意げに微笑んで見せる。玲奈は、そんな楓の顔を一瞬だけ見て、すぐに目を逸らした。そして呟く。

「あんた以外に捕まる気もないけどね。」

 この声は、楓には聞こえていなかったようである。

「何か言った?」

「んーん。なんでもない。」

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