利害一致
「あのさあ、」
「うん。」
「……あのさあ、まだ居候を許したわけじゃないんだから、荷物広げないでくれる?」
「えっ?許してなかったの?」
ため息が出る。既に我が家かのようにリラックスして荷物を広げ始めている楓にも、家賃に釣られて部屋に入れてしまった私自身にも。
「……何が目的なの?」
「目的って?」
楓は私と目を合わせないまま荷物を広げている。大きなクッションを取り出していて、そのバッグによく詰め込められたものだと感心する。
「いや、その……私の監視、とか……」
「監視?もしかしてカノジョには拘束されてみたい感じ?」
「ふざけないで。楓が警察としてここに居るのなら、私は迂闊に身動きが取れない。もしそうなら、適当な対応は取らせてもらうつもりだよ。」
楓は手を止め、ようやく私と目を合わせてくれた。驚いているような顔。少し考えるような素振りをしてから、それから楓は答えた。
「本当にやりたくてやってるんだね。……安心して。ここに居るのは玲奈の幼馴染の樫本楓。幼馴染のこと、監視なんてするわけないでしょ。」
「……でも、それなら楓の目的は……」
楓にベッドに押し倒された。顔が近い。
「目的がないと、楓の部屋に泊まっちゃだめなの?」
硬直したまま、結果を生まない思考をぐるぐると巡らせた。暫くして、私は楓の顔から目を逸らす。私の負けだ。
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