ダイヤモンドと払えぬ家賃

 昨夜は疲れた。それに、散々な結果だった。

 目当てのピンクダイヤは手に入れたけど、屋根から落ちるし幼馴染に見つかったと思ったら警察だったし。挙句にキ○ガイと思われるし。落ちたときにぶつけたせいでまだお尻が痛い。


 ベッドの中に居るまま、スマホの時計を見てみる。――まだ10時じゃん。二度寝しよ。

 なんて思ったちょうどその時、枕元に置こうとしたスマホが着信音を叫び始める。

「あーもう、うるっせーなあ!はいはいはいはいはい!」

 うるっせーならそのまま電源を切って無視して寝たらよかった。でも、その時の私は絶賛寝ぼけ中だった。

「はい……ふぁあ~…………もしもし?」

『何だ?平日の昼間っから寝てたのか?』

 電話の向こうの相手は、

「パパ?!」

『今朝から何回も電話掛けてるんだが。気づかなかったか?』

 どうしよう。全く気付かなかった。

『仕事は見つかったのか?』

「……いや、その、」

『……まだ引きこもってぐうたらしてるのか。約束したよな?』

「いや、でも、それは流石にちょっと、私だってイロイロあるんだしさあ!」

『言い訳は聞き飽きた。今月から仕送りはナシだ。』

「いや、ダメだって!私がホームレスになって餓死してもいいの?」

『知らん。お前の人生はお前が責任持て。』

「だめだめだめ!せめて今月の家賃分くらいは……。ねえ!謝るから!――あれ?もしもし?」

 電話が切れた。終わった。高校卒業から5年くらい続いてきた仕送りを止められた。就職するまで、という約束で続けてもらっていたけど、流石に10回もバイト始めて辞めてを繰り返していたら愛想を尽かされた。


 のろのろとベッドから立ち上がって、机の引き出しを開ける。ヘアピンとかの小物の中で、明らかに存在感が違うモノが混じっている。これは、昨夜盗んできたピンクダイヤ。闇市場かどこかで売れば、暫くは生活に困らないだけ稼げるだろう。というか、怪盗活動用のお金を引き出せば死ぬまで遊んで暮らせるくらいある。

 でも……。

「ダサすぎる。」

 生活に困って盗みをするなんて、ただの強盗や万引きと変わらない。かっこいい怪盗は人生に余裕があって、生活費なんていう低俗な目的での盗みはしないのだ。だから、私はこれを売らない。

「バイト探さないとなあ。」

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