第23話 国王なの!?

今日もお店がんばるか。

そういえば最近あのおじいさん、お店にこなくなったな。

開店当初から、毎日欠かさず来てくれていたのになにかあったのかな~


「なあ、聞いたか?」

「うちの国と隣の国との争いの話か?」

「ああ」

「今、国王が話会いをしているようだぞ」

「そうなのか、だいぶ時間がかかっているようだな」

「ああ、今回はそう簡単には終わらなさそうだぞ」

「うまくいかなかったら……」

「もちろん、争いになるはずだ」

「それは大変だ」


おれはお客の話をきいて怖くなった。

戦争ってことだろ。

怖いな。

国王さま、戦争にならないように頑張って。

祈るしかない。


そんな話を聞いてから数日がたった。


店の前に、とても立派な馬車が止まった。

ん?

なんだ?

お貴族さまでもきたのか?


おれは外にでていった。

すると、執事らしき人がでてきた。


「あなたさまがこちらの亭主さまですか?」

「はい、わたしが珈琲店の主ソウマと申します」

「さようですか、今日はあなたさまにお願いがございまして寄らせていただきました」

「あ、はいなんでしょうか?」

「わたくしと一緒にきていただきたいのです」


やっぱり、お貴族さまらしい。

屋敷に来いというのである。

まあ、おれがいなくてもお店はもう大丈夫だよな。


「はい、わかりました」

「大変、ありがとうございます」

「では、コーヒーの用意をいたしますので少しお待ちいただけますか?」

「はい、お待ちしております。あ、それと甘めのコーヒーでお願いします」

「あ、はい」


甘めのコーヒーを知っているのか。

飲んだことがあるのかな~

それか、話できいて甘いコーヒーを飲みたいのか?

まあ、とりあえず用意しよう。

スーツも着替えた。

おれはノアに説明してソフィアにも珈琲店をお願いした。


「お待たせいたしました」

「では、こちらにお乗りください」


おれは馬車に乗った。

なんかふわふわだ。

今まで乗った馬車の中で一番、高級感がある。

お貴族さまの中でもトップクラスのお貴族さまなのだろう。

緊張してきた。


しばらく、馬車を走らせた。

窓から外をみると、アルベッロ街についたようだ。

やはり、アルベッロ街か。

お貴族さまだな。

でも、なかなか馬車は止まらなかった。

え?


「あの~どちらまでいかれるんですか?」

「もうすぐ、お着きになります」

「あ、はい」


アルベッロ街を抜けた。

すると、道の両サイドに石畳の壁が現れた。

その壁は長く続いていた。

そして、ようやく馬車は止まった。


「着きました」

「はい」

「ソウマさま、お疲れになったでしょう」

「いえ、大丈夫です」

「そうですか? ではご案内いたします」

「はい」


おれは馬車をおりて建物を見上げた。

わぁ~

すごい建物だ。

これはすごい立派だ。


「これはすごい立派な建物ですね」

「はい、それはもちろんでございます。国王さまが住まわれているお城ですので」

「ああ、そうですか国王さま……の」


ん?

いまなんて?

国王さま?

国王って国の王さまのことか?


「あの~いま聞き間違えてしまったようで国王さまのお城と聞こえてしまって、ハハハッ!」

「はい、国王さまといいました」

「えええええええええええ?」

「大丈夫ですか、ソウマさま」

「あ、はっはい」

「では、ご案内いたします」

「はい」


おれは緊張しすぎて、同じ側の腕と足が一緒に出ていたに違いない。

国王さまのお部屋に自分で歩いた記憶がないのだ。


トントンッ!


「はい」

「国王さま、ソウマさまをお連れいたしました」

「おぅ! 入ってくれ」


重そうで頑丈そうな扉があいた。


中には立派な服をきた、国王さまがいた。


「おぅ! 待っていたぞ」

「あ、はい、わたくし異世界珈琲店の主のソウマと申します」


おれは深々と頭を下げた。

頭をあげていいというまでさげていた。


「アハハハッ! 亭主、頭をあげてわたしを見たまえ」


おれは恐る恐る頭をあげた。

そして、国王さまを見た。

国王さまは笑顔だった。

いや、なんか見たことあるような……。


「亭主、サンドウィッチとコーヒーをもらえるかな?」


ん?

この注文の仕方。

そして、この声。

え?


「おじいさん!!」

「アハハハッ! そうだよわたしだよ」

「おじいさん、元気そうでよかったです。最近お店に来られなかったので心配していました」


ごほっ!

執事が咳払いをした。


あ!

やばい!

国王さまをおじいさんって、いっちゃってた。


「ああ、すみませんっ。国王さま」

「アハハハッ! ところで今日は呼び出してすまなかったね」

「いえ」

「ずっと、会議でコーヒーを飲みに行けなくて」

「そうだったんですね」

「もう、さすがに会議に集中できなくなってきたから執事に頼んできみをつれてきてもらったんだ」

「では、いますぐにご用意いたしますね」

「頼むよ」


おれは執事にここの一角を貸してくれとお願いした。


「執事さん、お湯をもらえますか?」

「はい、かしこまりました」


おれは疲れているであろう国王さまにいつもより、少し苦めでもあまり苦いと胃をやられてしまうから少し甘めのちょうどいいコーヒーを用意した。


「サンドウィッチもお持ちいたしました」

「それはありがたい」

「そして、コーヒーはこちらになります」

「わぁ! 久しぶりで飲む前から気持ちが落ち着くよ」

「どうぞ、召し上がってください」


国王さまはコーヒーの香りを嗅ぎ、それからコーヒーを一口飲んだ。


「ん~~おいしい」


よかった~


「これは本当に落ち着く」

「はい、珈琲の香りを嗅ぐと脳からα波がでるらしいのです。α波が出るということはリラックスしているということになります」

「そんな作用があるんだな」

「そして、珈琲にはカフェインが入っていて疲労回復にもつながっているといわれています」

「だから、コーヒーを飲むとその日の疲れが和らいで残りの時間も頑張れたんだな」

「はい、そうだと思います」


国王さまは元気になった気がした。


「国王さま、次の会議のお時間です」

「ああ、わかった」


国王さまはまた、会議のようだ。


「亭主よ、しばらくはお店にいけないからたまに来てくれるとありがたいんだが……」

「はい、もちろんです」

「いいのか?」

「はい、いつでもまいります」

「そういってもらえて元気がでたよ」


そういうと、国王さまは会議に向かった。


「ソウマさま、ここでお待ちください」

「はい」


おれはしばらく待った。

すると、執事がもどってきた。


「ソウマさま、お待たせいたしました」

「いえ」

「こちらは、国王さまからです」


おれは国王さまから、ここの城に入る許可書をもらった。

そして、金貨500枚を渡された。


「え? 執事さん、こちらの金貨はもらえません」

「国王さまには毎回コーヒーをのんだあと、お金を払っていただいておりますのでこちらはいりません。また、いつでも飲みにきてくださいとお伝えください」

「はい、かしこまりました。そのようにお伝えいたします」


おれは、馬車で送ってもらった。

その馬車の中で、国王さまがときどきお忍びで街を回っていること。

そして、たまたま開店日におれのコーヒーを飲んで気に入ってくれたこと。

毎回、視察の帰りによってくれていたことなど話をしてくれた。

この間は、しばらくこれなくなることを知っていて違うものを頼んだらしい。

自分に厳しくするため、濃いコーヒーで気合をいれたそうだ。


それから、何度か国王さまのお城にいきコーヒーを淹れた。


そして、隣の国とも争いにならずにおさめたようだ。

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