第20話 いたずらゴブリン
おれは、コーヒーの木が気になっていた。
またいたずらされたらどうしよう。
その夜、監視することにした。
「ソウマ、ずっとここにいるのか?」
「ああ、しばらくここにいるよ」
「じゃあ、ノアもいるのだ」
「いいのか?」
「ああ、いいのだ」
「では、わたしもしばらくここにいます」
「ソフィアまでいいのか?」
「はい」
おれはこころ強かった。
やっぱり、ひとりでは怖かったんだよなぁ~
「ソウマ、なかなか現れないな~」
「そうだな」
「今日はこないのかもしれませんね」
「そうだな」
すると、ガタッガタッ!
「ん? なにか音がしたぞ」
「うん、したのだ」
「はい、たしかに」
反対側の方から、音がした。
「反対側だ!」
おれは急いで、反対側のテーブルやいすが置いてある方を見にいった。
すると、そこにはいすにつまずいて転んでいるゴブリンがいた。
「ゴブリンだ……?」
おれたちは一瞬茫然とした。
「ソウマ、ゴブリンなのだ」
「そうか、やっぱゴブリンか」
でも、よくみるとまだ小さい。
そして、震えていた。
おれはそのゴブリンに声をかけてみた。
「なあ、きみはゴブリンか?」
「……」
ゴブリンはこっちをみたけど震えている。
「大丈夫だよ、なにもしないから」
おれは少し近づいた。
「ソウマさん、危ないです」
「ああ、大丈夫だ」
おれはもう少し近づいた。
「きみはお腹がすいているのか?」
「……うん」
そのゴブリンはうなづいて、小さな声でうんといった。
おれはこのゴブリンは襲ったりしないと思った。
勘だけど。
「こっちにおいで、なにか食べるものを用意してあげるよ」
「ソウマさん、大丈夫ですか?」
「このゴブリンはお腹がすいているんだと思う」
「ソウマがいうなら大丈夫なのだ」
「そうですね、サンドウィッチを用意しますね」
「ありがとう」
おれはゴブリンについてくるように話をした。
ゴブリンは恐る恐るついてきた。
いすに座らせた。
ゴブリンはおとなしくいすに座って待っていた。
「お待たせしました」
ソフィアがサンドウィッチをもってきた。
ゴブリンはおれの目を見た。
「大丈夫だよ、食べていいよ」
おれがそういうとサンドウィッチを食べ始めた。
ガブリッ!
モグモグ!
ガツガツ!
「慌てなくてもいいよ、ゆっくり食べていいんだよ」
「うん」
ゴブリンは嬉しそうに食べた。
よほどお腹がすいていたのだろう。
あっという間にサンドウィッチを食べてしまった。
おれは飲むかわからないが、コーヒーも用意した。
「これコーヒーっていうんだ、飲んでみて」
おれは、お砂糖とミルクをいれた少し甘めのコーヒーを用意した。
「おいしい」
「そうか、おいしいか」
ゴブリンは嬉しそうだ。
ゴブリンの口にもあったようだ。
甘めが好きみたいだ。
「ありがとう」
ゴブリンがお礼をいった。
「昨日、おれのコーヒーの木を食べたのもきみかい?」
「うん、ごめんなさい。お腹がすきすぎて……」
「そうか」
「本当にごめんなさい」
「いいよ、でももうあんなことしたらダメだよ」
「うん」
ゴブリンは反省しているようだ。
「でも、なんでそんなにお腹がすいているんだ?」
「ぼくの村に食べるものがなくなってしまった」
「え?」
「それで、みんないろいろな街に出てきて食べているんだ」
「それで、最近ゴブリンがあちこちに出没してるんだな」
「ごめんなさい。でもみんな生きることに必死なんです」
「そうだよな」
でも、なんで食べるものがなくなったのかなぁ~
おれは不思議に思った。
「きみの村はどこにあるんだい?」
「あ、ぼくはチップといいます」
「チップかぁ~」
「はい、ぼくの村はここをまっすぐいった街よりもっとまっすぐいったところにあります」
ん~とにかくまっすぐいったところなんだな。
「ソウマさん、わたし聞いたことがあります。コルマージュ街の先に『北宮の森』があります。その奥にゴブリンが住んでいるときいたことがあります」
「そうか~けっこう遠くからきたんだな」
「でも、ぼくはまだ体力的にここまでしかこれない」
こどもだからかぁ~
じゃあ、アルベッロ街であらしたのは大人のゴブリンたちってことか。
おれは、なんだかかわいそうに思えた。
なにかおれにできないことはないのか考えた。
でも、なにも思いつかなかった。
「ソフィア、サンドウィッチを何個かつくれるか?」
「はい、作れますけど……」
「チップに持たせてあげたい」
「わかりました、ノアさん手伝ってください」
「いいのだ」
ソフィアとノアは快く作ってくれた。
「チップ、サンドウィッチをもっていってくれ」
「いいんですか?」
「ああ、ほかの子のもあげてくれ」
「はい、ありがとうございます」
チップは嬉しそうだ。
おれにはこんなことしかできなかった。
「用意できました」
「あいがとう、ソフィアとノア」
「いえ」
「いのだ」
おれは、チップにサンドウィッチを持たせた。
「チップ、これを……」
サンドウィッチを袋に入れてチップの背中に背負わせた。
「ありがとう、この御恩はぜったいに忘れません」
「いいよ、気をつけてな」
「はい」
そういうと、チップはコルマージュ街の方に走っていった。
街の人に見つからないように帰れるか心配だった。
「大丈夫だったかな~コルマージュ街まで一緒に言ってあげればよかったかな~」
「きっと、大丈夫なのだ」
「そうですよ、ここまでこれたんですから」
「そうだな」
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