第19話 シルスタの派遣

今日も異世界珈琲店オープンの時間です。

おれは扉を開けた。

すでに、お客が待っていた。


「いらっしゃいませ、お待たせしました」

「ああ、コーヒーを頼むよ」

「はい、お待ちください」


もう常連さんにもなると、頼むものが決まってくる。

でも、最近ではリコとキコの村のイベントに参加したおかげでフロイデン街の人がくるようになった。

少し遠いのにきてくれてありがたい。

店の中はウルフ族のお客が増えた気がする。

そして、おれはこのイベントでいいアイデアを思いついたのだ。

それは、これだ。

ジャーン!


扉を出て外にテーブルといすを用意したのである。

そう、テラス席のように……。

いまはまだオーニングタープで代用しているが、いずれは壁をぶち破って室内から外にでられるように改装するつもりだ。


外で食べるほうが開放的でおいしく味わえるはずだ。

外が賑やかになってきた。

反対側では、コーヒーの木が大きくなってきている。

この木が大きくなって育っても、コーヒーとして飲むにはもっと木を植えなくてはならない。

この本数だと一回とったら終わりだよね。

でも、ここまで育ってくれたことにおれは感動している。

実ができるのが楽しみだ。


――――


珈琲店の方は、サイフォンを追加で注文した。

サイフォンの淹れ方を見たくてお店にくるお客もいるくらいだ。

店では3個をうまく使っている。

メニューも増やした。

コーヒー豆の焙煎具合も増やした。

今までは浅煎り・中煎り・深入りの3種類くらいだった。

でもいまは、倍の6種類の煎り方をしている。

煎り方だけではない。

挽き具合も、3種類から4種類に増やした。

いずれは、エスプレッソも淹れたいと思っているから5種類の挽き具合になるだろう。

そして、カップも追加で増やした。

これでもわかる通り、おかげさまで珈琲店も大繁盛している。


なにもかも順調にいっていたそんなある日……。


お客が話している声が耳に入ってきた。


「なあ、聞いたか?」

「アルベッロ街のことか?」

「ああ」

「聞いたよ、困ったなぁ~」


ん?

アルベッロ街って、ドゥーカス伯爵家がある街じゃないか。

なにかあったのかな~


「アルベッロ街でなにかあったんですか?」

「ああ、最近イタズラ好きなゴブリンが増えたらしくて」

「ゴブリン?」

「ああ、アルベッロ街で食べ物をあさって街を散らかしているみたいなんだ」

「そうなんですか」

「あそこは、綺麗な街だからね」

「そうですね」

「でも、こっちにも来るかもしれないからここも気をつけないと」

「はい、そうですね」


ゴブリンか~

アランさん大丈夫かな~

まあ、大きなお屋敷だから大丈夫だろう。


おれたちも気をつけないとな。


何日かたったある日のこと……。


いつものようにコーヒーの木をみに外にでた。

すると……。

コーヒーの木の葉っぱがむしり取られていた。

わぁ!

おれの叫び声に気づいてノアとソフィアが外にでてきた。


「どうしたのだ」

「どうしたんですか?」


コーヒーの木の葉っぱをみてふたりも驚いていた。


「なんなのだ」

「これはどういうことですか?」

「わからない。せっかくここまで成長していたのに……」


コーヒーの木はようやく、おれの腰のあたりまで成長していた。

でも、葉っぱはすべてむしられていた。

なんて、ひどい!


「だれの仕業なのだ?」

「わからない」

「噂のゴブリンでしょうか」

「さあ、どうなんだろう」


おれはショックであまり言葉にならなかった。

幸い、茎はおられていないようだからもしかしたら復活するかもしれない。

そんな期待をして、抜かれてしまった柵を綺麗に直した。


でも、ほんとうにこれがゴブリンの仕業だとしたらリコとキコを当分家に帰すのは危険だな。

シルスタは今、ギルド本部にいっているから当分は大丈夫だろう。


そう、シルスタはギルド本部から要請があってしばらくのあいだ本部で働くことになったのだ。

だから、帰ってきていないのだ。

久しく会っていないから寂しいな。

要請がきたらリコとキコもいってしまうのか~

本部から派遣できているからしょうがないのはわかっているが……。


あの日も、シルスタを送る会をやって送りだしたっけな~


「みなさん、わたし本部にしばらく行くことになりました」

「さみしいのだ」

「お世話になりました」


ソフィアはシルスタに抱きついて泣いた。


「わぁ~ん、シルスタさ~ん」

「わぁ~ん、ソフィアさ~ん」


まるで永遠の別れのように……。


どのくらい本部に行くかって。

1か月だ。


この日もお酒を飲んで寝た。


目が覚めると、ちゃんとおれは部屋で寝ていた。

ふぅ!

珍しくノアとソフィアは一緒に寝ていなかった。

シルスタの部屋の扉が開いていた。

のぞくと、そこにノアとソフィアの姿があった。

シルスタと一緒に寝たんだな~


おれはお風呂にむかった。

飲んだ次の日のお風呂はなんて気持ちがいいんだろう~

毒素がすべてでるようだ。


するとお風呂の扉が開いた。


ガラガラ……。

え?


「ソウマ、おはようなのだ」


ノアが全裸で入ってきた。

うわぁ!


「ノア、入ってきちゃだめだろ」

「今日はいいのだ」


今日はってなに?


「ソフィアとシルスタも入るのだ」

「え?」


おれは扉の方をみた。


えええええええええええええ~!!


ふたりはさすがにタオルでかくしてはいたけれど、お風呂に自ら入ってきたのだ。


「えええ? なにをしてるんですか? ふたりとも」

「あ、あの~わたし本部にいってしばらく会えないので一緒にお風呂にはいろうかと」


なにをいっているんだ?

シルスタどうしちゃったの?


「それならわたしも一緒に入ろうかと」


おいおいおい!

ソフィアまでどうしちゃったんだよ~


「ソウマさん、お背中流しましょうか?」

「い、いや、大丈夫もう洗ったから」

「そうですか」

「お、おれそろそろ出る」


おれは慌てて出ようとした。

そのとき、足が滑った。


わぁ!

思わずなにかをつかんで尻もちをついた。


どんっ!

痛てぇ!


「ソウマさん大丈夫ですか?」


シルスタがおれに近づいて体を起き上がらせてくれた。


「ああ、シルスタありが……とう」


おれはシルスタをみた。


ぶひょ~

ドバッー!

鼻血が飛び出た。


おれはシルスタのタオルをとってしまったようだ。

だって、シルスタのお胸が目の前にあった。


おれは鼻血をだして、倒れた。


「大丈夫か、ソウマ!」

「ソウマさん!」


シルスタとソフィアとノアの声がずっと聞こえていた。


――――


そんなこともあったな~

綺麗なお胸だったな~

デレ~ン!

おっとノアに見られるところだった。


シルスタが帰ってくるまであと少しだ。

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