第17話 サイフォン式
コーヒーの種を植えてから、みんな気になっているようだ。
おれは、毎朝水やりをしている。
「ソウマ、おはようなのだ」
「ノア、おきたのか?」
「うん、芽はでたのか?」
「まだだ」
「そうか」
そこに、ソフィアもやってきた。
「ソウマさん、ノアさんおはようございます」
「ソフィア、おはよう」
「芽はでましたか?」
「まだです」
「そうですか」
そんな日が続いた。
――――
「ノア、今日おれコルマージュ街にいってくる」
「ブリキの店か?」
「ああ、頼んだ品ができているころなんだ」
「わかったのだ」
おれは、朝早い時間にブリキの店に向かった。
コルマージュ街についた。
まだ、早い時間なので開いているお店は少なかった。
ブリキの店は開いているかな~
「おはようございます」
「ああ、珈琲屋の……例のものできてるよ」
「え、ほんとですか?」
「ああ」
そういうと、ブリキ店の亭主は奥の工房からもってきてみせた。
「どうだ?」
「わぁ! これです!」
それはおれが、紙に書いて説明したドリッパーでした。
ちゃんと穴があいている。
しかも、1つ穴のものと3つ穴のものを用意してくれたようだ。
「ありがとうございます」
「こっちはどうかな?」
もう1つ違うものを見せてきた。
それは、サイフォンだった。
「え? 作ってくれたんですか?」
「ああ、こんな感じであってるかな~」
サイフォンそのものだった。
「でも、このガラスの部分は?」
「ああ、これはガラス屋に頼んでつくってもらった」
「すごい! 本当にすごいです」
「あはははっ! 喜んでくれてよかったよ」
「ありがとうございます」
おれが書いた説明だけでサイフォンができた。
しかもガラス屋さんにも協力してもらってありがたい。
フラスコ部分と上の部分がガラスでできている。
「使ってみます」
「ああ、それでよければまた作るよ」
「お願いします」
おれは家に戻ってさっそくサイフォンをつかってみた。
上手に淹れればワンランク上のコーヒーができる。
まず、フラスコに水をいれる。
下からアルコールランプで水を温める。
濾過器は上のガラスカップの底におく。
濾過器にはチェーンがついているから端にひっかけておく。
上のガラスカップにコーヒーの粉をいれる。
そのカップをフラスコにセットする。
すると、フラスコのお湯が上のカップにあがってくる。
半分くらいあがってきたところでヘラで粉を混ぜる。
すべてのお湯が上にあがったらまた混ぜる。
まぜ終えたら、そのまま1分間待つ。
そのあと、アルコールランプをフラスコからはずす。
コーヒーがフラスコに落ちるまで待つ。
そして、また混ぜる。
このときの混ぜ方で味がかわる。
遅すぎると苦味が強くなる。
早すぎると酸味がでてしまう。
ここに気をつかう。
そうして、できたコーヒーをカップに注いで出来上がりだ。
さあ、味見だ!
おれは一口飲んだ。
ん~うまい!
一味違うよ。
上出来だ!!
「ノア、これを飲んでみてくれ」
「なんなのだ?」
「まあ、いいから」
ノアは飲んだ。
「これはおいしいのだ」
「そうか」
「苦味があまり感じなくてそのまま飲めるのだ」
「そうか、それはよかった」
よかった~
おいしくできた。
サイフォンも取り入れよう。
ソフィアたちにも味見をしてもらおう。
おれはカップにいれて、ソフィアたちにもっていった。
「お疲れさま」
「ソウマさん!」
「これ、よかったら味見して」
「コーヒーですか?」
「うん」
そういうと、ソフィアたちは飲んだ。
「美味しいです」
「うん、おいしい」
「「これは苦味が少なくていいです」」
「そうか、よかった」
「このあとの仕事も頑張れそうです」
「なんか、甘いものが食べたくなりました」
「そうですね」
「フフフ……」
「じゃあ、がんばって」
甘いものか~
店も慣れてきたし、そろそろメニューを増やそうか。
いままではサンドウィッチにチーズケーキとパウンドケーキだけだった。
ホットサンドとホットドッグなら、おれでも作れるな。
あと、シフォンケーキも増やそう。
シフォンケーキはソフィアにお願いしよう。
中身はあとで、みんなと相談しよう。
よ~し、また忙しくなるぞー
――――
コーヒーの実を植えてから2週間がたった。
おれはいつものように芽がでているか確認をしに、外にでた。
「ソウマ、ノアも見るのだ」
「ああ、今日は出ているかな~」
おれはノアと一緒に種を植えたカップをみた。
「ソウマ、なんかでてるのだ!」
「ああ、芽がでた!」
やったー!
芽がでたぞ。
それからは、双葉にになりどんどん成長していった。
ある程度大きくなったところで地面に植えた。
「ソウマ、お客きたのだ」
「ああ、いま行く」
おれは、今日もお客さまの喜ぶ顔を見るためにコーヒーを淹れる。
「いらっしゃいませ」
「いまから、魔物退治にいくんだ」
「それは大変ですね」
「ああ、だらか濃いめのコーヒーを頼むよ」
「はい、かしこまりました」
おれは濃いめのコーヒーを淹れた。
深煎りの豆を挽いて、ミルクでも用意するか。
「おまたせしました」
「ああ、ありがとう」
「こちらミルクになります。よかったらいれてお飲みください」
「ああ、わかった」
そのお客は一口のみ、とても苦そうな顔をした。
そして、ミルクをいれた。
「ん~おいしい」
ああ、よかった。
安心した。
苦いコーヒーを注文するお客もいるけど、たいていは思っているより苦いという印象になる。
だからおれは、ミルクをつけるようにしているのだ。
カフェオレも用意できる。
しかしこの世界の人たちは、というか冒険者たちは自分で調節して飲むのがお好きのようだ。
だから、あえてカフェオレというおしゃれなものは用意しないことにした。
サイフォン式のコーヒーを飲みたいという常連客もいる。
おれはサイフォンの使い方にもなれてきた。
そんな中、ギルド本部からの指示で久しぶりのお休みがとれた。
珈琲店も休みにした。
たまたま休みが、前に約束していたリコとキコの村『フロイデン街』のイベントとかさなった。
おかげで、みんなでいけることになった。
「やったー、みんなでお出かけなのだー」
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