シロノナカ

見えたのは無数の手。

何かを求めるようでいて、何かを拒むようで、とても必死で、おどろおどろしい光景だった。


(これに捕まってはまずい)


だからまた彼を助けた。それが後々に必ず良い結果になると信じて。

「さあ行け!お前が救うんだ。この世界を!」


あとは、どうしただろうか。

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気がつけば、そこは「白」だった。

どこまで行っても白、白、白。

気が遠くなるほどに白かった。

-動いたか。えらく時間がかかったな-

謎の声。

それは、この白い世界全てが震えるかのように。

それは、この身体に入ってくるかのように。

重く、強く、そしてどこか輝いているかのように感じさせる。

だからこそ問う。

「お前は、いや、あなたは誰だ?」

気になる。気になってしまう。

-やはり問うか。らしいな。だがまずは自分のことを把握したらどうだ?-

私のこと?なにを言っているのだ?私は...。私は今生きて、いる....?

「ここは天国か?」

そうだ。私は死んだ。そのはずなのだ。身体もない。


-違う、とも言い切れないな。だがここは我の中であり、そして世界そのものだ-

「あなたの中?世界そのもの?本当に何者だ?それよりも私は死んだはずだ」

-エヴォリスがそう簡単に死ぬことはない。というよりも死ねないのだよ君たちは-

「だが私はコアを失った、なのに何故私の意識が存在する」


-それは消えゆく君の意識をこの中へと取り込んだからだ-

「意識を?」

しかしエヴォリスの死はコアの消失のはず。コアがあれば復活出来るが、私にはもう無い。

-コアは基点だ。重要なものだがそれが全てではない。それよりももっと大事なものがある-

「大事なもの?なんだそれは?」

-君そのものだよ-

....なにを言っているのだろうか。

私そのもの?なにがなんだか。

-正確には名前や意志だ。君を形作るモノ。これが強くある限り、君というものが消えることはない-

「だがそれがどうしたというのだ。私はあの時選択し、消えたのだ。それをなぜ止めた!」

-君がまだ生を望んだからだ-

「嘘だ!」

-嘘ではない。事実だ。君はまだ彼を助けたいと願っている。彼のそばで力になりたいとも-

「それは....」

そうだ。出来ることならもっとずっと側で支えたい。支えていたい。

あの時止まっていた時間を動かしたのはなんであれ彼だ。

彼こそ私の主だと、そう思っている。だから...。

「どうすればいい?」

-身体を与える。そして強くなれ。我としても君がいた方が都合が良い-

「下心あり、か。いや、むしろその方がいい。心置きなく乗れる」

-その心意気に応じて答えよう。我は   、『白の者』だ。そして忘れるな、白はいつでもそこにいることを。

時には全てを包み込み、時には全てを呑み込むことを-

「つまり、どちらでもあり、どちらでもないのだな」

-そういうことだ-

彼はおそらく、今は味方なのだろうと、そう思う。

-さあ、君の名前は強く念じろ、それだけでいい-

「わかったよ。そうだ。私は   だ!」

その瞬間、その白い世界はガラスのように砕け、隙間から眩い光が差し込んできた。


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身体の感覚。懐かしいと感じる。

何者かが顔を覗き込んでいるらしい。

それは青いコアを持っていた。初めて同種に会った。それはここが『空間』なのだと理解させる。

「うむ。気がついたようだね。色々と聞きたいことがあるのだが、こういうのは吾輩から言うのが礼儀だと聞いている」

癖強めだ...。

「吾輩の名前はキッカー。この島に住んでいるエヴォリスの一体である。して、君は?」

聞かれたのなら答えるしかない。


「私か、私はトッパ。トッパ・ハッパだ」


力強く、自分にも言い聞かせるように、そう答えた。

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えるなる短編「あの時この時」 じほにうむ @Zi_honium

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