えるなる短編「あの時この時」
じほにうむ
ウツツユメミツ
いかに異世界の生物だからと言って、エヴォリスが眠らないことなどない。
それが普通のこと。
そして彼らもまた夢を見る。
だが夢とは、一体どこから来るものなのだろうか。
******
私は誰かに触られた。これは、人の手か?百丸のものかと思われたが違う。それよりも小さい子供のものだ。
だが島には彼以外は誰も入れない約束だった筈だ。
なぜ部外者がいるのだろうか?
だがわからないし何も見えない。それになぜだか身動きが取れなかった。
どうしたことか、急に視界がひらけた。違う。島じゃない。それに、見える。見えるぞ。顔が見える。
私を見て怯えている。私を見上げている。
ん?見上げている?そんな馬鹿な。
いや、よくよく考えてみれば目線がいつもより高い。それに周りが燃えている。
だが今はそれよりも怯えている彼に手を差し伸べるべきだ。そう思った。
体の感覚がわかった。動かせそうな気がする。
だが私が腕を上げようとすると、彼はより怯える。
何故?
ふと自分の腕を見る。答えは一目瞭然。
何故なら私の手がなかった。
いや、というよりもこれは私の腕じゃなかった。
その腕の先にものを掴めるような手はなく、それはそのまま銃となっていた。
これでは怯えてしまうのも無理はない。彼は自分の身の丈もある銃を向けられているのだ。
だからせめて声をかける。
「大丈夫だ。怯えないでいい。私は、君の味方だ」
「嘘だ!お前の、お前のせいで父さんと母さんが....」
何を言っているのだ。そもそも何が起こっているのだ?
だから、問う。
「何だそれは。私は何も知らない。目が覚めたのも先程のことだ。お前が何かしたのではないか?」
「違う!絶対に違う!違うって言ったら違うんだ!」
必死だった。顔を横に振り否定する行為。声は聞いていてとても辛く悲しいと思わせる。
こちらも辛いだけだった。だが....。
「危ない!天井が崩れるぞ!早く!早く逃げるんだ!」
新しい声が響く。忠告と同時に天井だったものたちが彼の上に落ちていった。
私は走った。彼を守るために。
その後はどうなったかはわからない。
目が覚めた時は元の体、よく馴染んだ私のボディだった。
それにしても嫌にリアルな夢だった。
******
あんな内容だったから今でも思い出せる。
だが今日は人に会う。それもはじめましてだ。
だからこれはそんな待ち時間の暇つぶしに思い出すことじゃない。
まあ、勝手に呼びつけたから、本当に来るかはわからないのだけど。
でも会ってみたい。
「ほんと、話だけは聞かされてたが、百丸の孫ってのは一体どんなやつなんだろうな?」
会えるのがとても楽しみだ。
おわり
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