第52話この世界は
クリスティンと2人の司祭は、続々と現れる魔物を倒していく。魔法師や騎士達は後から着いていく事しか出来なかった。
ダンジョンに入ってから半日は過ぎただろうか、やっと深層部に辿り着くと、奥から赤い光が漏れて薄暗いダンジョンに明かりが差している。その光に興奮した魔法師が走り出していくと、洞穴がありそこには星が夜空に散らばり輝くかのように、沢山の水晶石の魔石がキラキラと赤く輝き真っ暗なダンジョンを赤い光で満たしている。
「……なんて、綺麗な魔石なんだ!」
そう呟きながら1人の魔法師が魔石に触れると、その石から一筋の黒い煙が立ち上り、魔法師の身体はまるで水晶石に吸い取られたように一瞬で骨と皮だけになって倒れてしまった。
「う、うわー!!」
そこにいた3人の魔法師は腰を抜かし這いずりながらこの場所から逃げ出そうとしたが、魔石から出てきた黒い煙が身体に絡みかれて骨と皮だけになってしまった。
「まったく。鑑定スキルを持っているのに、魔石の鑑定をせずに触るとは」
骨と皮だけになりながも死ねずに「う〜」と、唸っている魔法師達を、まるで虫けらを見るかの様に軽蔑の眼差しを向けた。そして、洞穴の入口を囲う様に彫り刻まれている文字に魔力を流すと、白く文字が浮かび上がった。
「これは……、古代語?いや、神語か?」
「アーロンも知らないだろうね。これは古代語でも神語でもないよ」
「クリスは、この文字が読めるのか!?」
「読めるよ。だって、俺の故郷の言葉だからね」
「……クリスの、故郷?」
「ああ、この世界じゃない、俺の住んでた世界の日本語だよ。それに、これを書いたのも俺だしね」
「……どういう事だ?」
「アーロンは…、俺がこの世界を作ったって言っても、信じるかい?」
「何を言ってるんだ?この世界を作っただと?」
白く浮き上がった文字から光が消えると、クリスティンは洞穴の中に入って行った。倒れ込んでいる3人の魔法師達を蹴り飛ばすと、魔石が真っ赤に光輝きだして魔法師達の身体を吸い込んだ。
その光景に騎士達は震え上がり逃げ出そうとしたが、クリスティンが魔法で捕縛して、魔石に向けて騎士達を投げ飛ばすと、騎士達の身体が吸い込まれて消えていった。
そして、振り返ったクリスティンの顔は、まだ幼く12歳になる子供には見えない、邪悪な笑みを浮かべていた。
「そうだよ。この世界は…、俺が原作を書いた、ゲームの世界なんだ」
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