第51話 軟弱共だったとは
5年前
ウエイザー公国とラウル王国に跨る山脈に巨大なダンジョンが突然現れた。ラウル王国の鑑定スキルを所持している魔法師達が調査をし、Sランクの魔石ダンジョンである事が分かった。しかし、ただの魔石では無くダンジョン奥に魂を封印できる魔石があるというのだ。そんな特殊な魔石をウエイザー公国に気付かれる事なく独り占めしたかったラウル王国のジャスティン・ラウル国王は、鑑定をした魔法師達に緘口令を敷き、魔物討伐騎士団と共にダンジョン攻略し魔石を採掘し跡形も無く破壊せよと命じたのだった。
国王はウエイザー公国に情報が漏れる事を恐れて4人の王子達や官僚達にも秘密にし、ラウル王国でダンジョンの事を知る者は攻略に行く者以外は国王と宰相の2人だけだったが、クリスティン第三王子がダンジョン攻略に参加させて欲しいと願い出たのだ。
他の王子だったら、緘口令が出ているのに知っている事に疑問を持っていたが、彼に関しては別だった。
何故なら、幼少期からクリスティンの助言により、戦争やスタンビートを事前に回避出来たり、天災による災害を最小限に抑えられたのだ。その姿に幼いながらも賢者様の様だと讃える貴族や官僚達かいるほどだ。
だから、ダンジョンの事も知っていても、おかしくはないだろうと国王は判断した。しかし、この判断がのちにクリスティンへの不信感に繋がるのだった。
――――――――――――――――――――――
ダンジョン攻略に魔物討伐に慣れた騎士団でも、このダンジョンには手こずっていた。通常ならCランクのゴブリンやオーク達がAランクの強さだからだ。
魔法師達が支援魔法で騎士達を強化しているが、いくら先鋭だとしても5人程の騎士達では次々に襲ってくる魔物達との戦いに疲弊していった。
「このダンジョンは攻略出来ないのでは……」
騎士団長がポツリと呟くと、他の騎士達や魔法師達も絶望に満ちた表情になり戦意を喪失していった。その一瞬の隙に大きな二の角を持ったオーガがゴブリン達の中から飛び出して、騎士団長に巨大な斧を振りかぶり襲ってきた。
戦意を喪失しかけていた騎士団長は咄嗟の事に剣を構えるのが遅くなってしまい、「ここまでか」と、絶望感に襲われ諦めてしまった。その時、キラキラと輝く銀髪の小さな少年が目の前に現れると、魔法でオーガの身体をバラバラに切り裂いた。
「全く、我が国の騎士団は、こんなにも軟弱共だったとはな」
振り返る少年の目は真っ赤に光っていて、魔人かと見間違えてしまう程の魔力を放っていた。
「クリスティン……殿下……?」
後方に居たはずの魔力を持たず剣も握れないクリスティンが、自分の目の前に立ちオーガを一瞬で倒した事を理解しきれなく戸惑っている騎士団長を嘲笑いながら、クリスティンの隣に黒髪に黒い瞳をした司祭服を着た男と、真逆の銀髪にピンクの瞳のキラキラと輝く司祭服を着た男がクリスティンの隣に並んだ。
「ラウルの騎士も大した事がないだな。だから、クリスが俺を助けたのか」
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