第50話 身体の持ち主

雲一つない引き込まれる青空に、青い鳥のアマリリ達が飛び交いながらピーピーと軽やかな歌を奏でる、穏やかな風が吹く平和な午後の昼下がり。


疲れた身体と心が癒されそうな、暖かく優しい時間が流れている山の奥にある小屋の中は、黒く澱んで重苦しい空気ぐ漂っていた。


バン・ビルバルットは呼ばれてここまで来たら、オリヴィアが全裸で庭に立っていたから不可抗力で見てしまったのに、魔法で雷を落とされて土に埋められ、テーブルに座ってきの子スープを機嫌良く食べているオリヴィアの隣で殺気を放ちながら睨んでくるアーロンクロイツに、ロイド以上に理不尽な人間だと、涙目になりながらに俯いていた。


「アーロンよ、バンがびびってるから、いい加減にしないか」


「駄目だ。姉様の裸体を見たんだよ、極刑に値する」


「きょ!極刑!?」


「まったく、若いのを虐めるな」


「若いのって……、僕、いちを116歳になるんだけど……」


「それは、オリヴィアが年寄りだと言いたいのか?」


「違う!大聖女様は若々しくてお美しい!」


「私は年寄りだぞ?」


「それだと、俺も年寄りかな?」


「それよりアーロン。お前、いつのまに王子様になったんだ?」


「そうですよ!貴方はラウル王国第三王子クリスティン・ラウル殿下ですよね?」


「この身体の持ち主は王子様だね。でも、俺はオリヴィアの愛弟アーロンクロイツ・カールトンだよ」


「身体の持ち主?それは、どういう事?」


ラウル王国の王子を殺して身体を乗っ取ったのか?と、思ったが口に出したくなく、眉間に深い縦皺を寄せながらも不安げな表情をして見上げるオリヴィアの頭を優しく撫でながら、アーロンクロイツは優しく微笑んだ。


「クリスティンはね、俺に身体を預けたんだよ」

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