第49話 大聖女の加護
「っは!ロイド!!」
オリヴィアは目を覚ますと懐かしい見覚えのある、雨漏りの跡が染み付いた古びた天井があった。
キョロキョロと見渡すと、そこは、100年間引きこもっていた何もない小さな山小屋だった。
ロイドに見つかってから1週間くらい家を空けただけなのに、何ヶ月も経っているかのように懐かしく思った。
「あれ?私の、家…?」
「起きた?」
隣から声が聞こえて勢いよくベッドから飛び降りると、ベッドにはサラサラの銀糸の髪の毛から覗く真紅の瞳が、愛しいそうにオリヴィアを見つめる、クリスティンの姿のアーロンクロイツが横になっていた。
「アーロン!」
「おはよう、オリヴィア」
「おはよう、じゃない!あんたはいったい、何をしてるのよ!」
「まあまあ、落ち着いて」と、言いながらベッドから出ると、オリヴィアの前に立ち優しく抱きしめながら頭を撫でた。
「とりあえずご飯にしよう、お腹空いてるでしょ?」
「……確かに、お腹空いた……」
オリヴィアは昔からどんなに怒っていても、アーロンクロイツに頭を撫でられると、落ち着いて冷静になれるのだ。それに、お腹空いたと聞かれてとってもお腹が空いてきて、何か食べたくなってきたのだ。
「うん。オリヴィアの好きなきの子スープを、作ってあるよ」
「マジで!!アーロンのきの子スープ大好き!」
「ご飯の準備してる間に、顔を洗っておいて。外の湯船にお湯を用意してあるから」
「……ご飯食べたら、ちゃんと話てね」
「ああ、ちゃんと、話してあげるよ」
外にある大釜には湯がたっぷり入っていて、オリヴィアの好きなレモングラスの爽やかな香りが鼻腔を刺激すると、思わず服を脱ぎ捨ててザブーンとお湯を溢しながら大釜に入った。
「はあ〜、いい湯だね〜」
お湯に浸かりながら木々を眺めていると違和感を感じた。最後にこの大釜で入浴した時には、みずみずしい爽やかな新緑の香りを放ちながら若葉が芽吹いていたのに、今では木々は青々と茂り夏にやってくる青と白のコントラストが美しい、手のひら程の大きさの鳥達がピーピーっと
「お前は、去年生まれたネリーか。……まて、なんで、まだ春なのに、夏鳥がいるんだ?」
この鳥はアマリリと言って夏になると山にやって来て産卵し子供を育てる。そして、冬が来る前に南下して行く渡り鳥なので、春にはまだ山には来ていないのだ。
「……お前の家族に、合わせてくれるか?」
アマリリはコクコクと首を縦に振ると、近くの大木に向かって飛んで行く後を飛行魔法で追って行くと、葉が生い茂る大木の太い枝に、枯れ木で作られた巣の中には母鳥に擦り寄りよる三羽の小さなアマリリがピーピー鳴いている。そして、オリヴィアを案内した父鳥は肩の上に止まって、翼を広げて家族を紹介しているようだ。
「可愛い子達だな。私が名を付けて、聖女の加護を授けていいか?」
母鳥は嬉しそうにピーーと鳴きながら首をコクコクと縦に振ると、子供達をオリヴィアの方に向けた。
「ふむ、深い青色をしているお前はサリー。腹から顎の下まで白いお前はミリー。頭に冠の様な模様があるお前はアリー。そして、母のお前はユリーだ」
オリヴィアは名前を呼びながら指先で頭を撫でると、白い暖かい光でアマリリ達を包んだ。
「ネリーの家族が、健やかで、愛に満ちて、平穏で幸せに過ごせるよう、大聖女オリヴィア・カールトンの加護を授ける」
パーっと白い光が金色の光の小さな粒になり、アマリリに降り落ちていく。子供達は光を食べよう口をパクパクしながらはしゃぎ、母ユリーは小さな黒い瞳を涙で潤ませながら子供達を見ている。
肩に乗っているネリーを両手で優しく包むと、巣の中にやり指先で頭を撫でた。
「ネリーよ、家族をしっかり守れよ」
ネリーが力強くピーと鳴くと、オリヴィアほ木から降りた。そして、子供の大きさから今が8月で、ここを去ってから4ヶ月が過ぎているのだと分かった。
「……私は、そんなに、寝ていたのか?」
とりあえず、もう一回お風呂に入ろうと大釜に向かうと、誰かがやって来た気配がして振り向くと、真っ青な顔をしながら小刻みに震えているバン・ビルバルットが立っていた。
「なんだ、バンか」
「ギャーーー!!!!!殺される!!!!」
「はあ?なんでお前を殺さなきゃならん」
「大聖女様にじゃなくて!ロイドに殺されるの!」
「ロイドじゃなくて、僕にね」
小屋から出て来たアーロンクロイツは、虫ケラを見る様にバンを睨むと雷を直撃させて、「この害虫が」と、呟くいて土魔法を使いバンに土を被せて山を作って埋めてしまった。
「我が弟よ、バンが死んでしまうよ?」
「これくらいで死んだら、副総長なんて出来ないでしょ?ほら、これ着て」
アーロンクロイツは白いバスローブをオリヴィアに着せた。
「確かに、こんなんで死んだら、ロイドの部下は務まらないな」
「死ぬわーー!!!」
と、叫び声を上げながらバンは風魔法で土の山を吹き飛ばした。いつも深く被っているフードが外れて、真っ黒でボサボサの肩まである髪が露わになって、真っ赤な瞳には涙を流して「もう……、辞めたい……」と、呟いた。
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