第48話 僕を選ぶかもね!

「アーリン村だと……」


バン・ビルバルットは魔法塔の自分の執務室で、メイドの部屋に隠した魔石の対の魔石を使って話を傍受していた。

ロイド・シルベスタが何かに乗っ取られていると確信していたが、確実な証拠が欲しく魔石で傍受していたが、まさか「ブラームス」と「アンジェリーナ」の名前が出てくるとは思わなかった。何故なら、バン・ビルバルットが魔法部隊に入隊して直ぐの仕事がブラームスの死体処理だったから、確実には消滅させていた。そして、一緒に処理した女性の死体が亡き妻のアンジェリーナだった。


それに、その現場に到着した時にオリヴィアが「アーロンクロイツ」の名前を叫んでいたので、名前に覚えがあった。


「全てがオリヴィア様が中心にいる……。アーリン村だって、総長がオリヴィア様を見つけた場所だしな。あー!面倒くさい!特別手当を貰わないと割に合わないぞ!」


バンは頭を掻きむしりながら、ベンジャミンに渡す報告書に「特別手当をくれないと辞めるからな」と、付け加えて部下に持って行くよう指示を出して、直ぐ様アーリン村へ向かった。


――――――――――――――――――――――

くそ!俺の身体なのに!何故なんだ!


ロイドは暗闇の中で自由に動かせない自分の身体が、部下や邸の従者達への傍若無人な態度と、オリヴィア以外の女を抱いているのに憤怒していた。

それに、誰も今の自分の状況に気付きもしない事にも怒りを覚えていた。


何故誰もこの状況に疑問を持たないのか?俺の部下はこんなにも使えない奴等ばかりだとは!

あれから既に3ヶ月が過ぎて4ヶ月が経とうとしているのに!


魔法部隊の部下達に憤慨していると、バン・ビルバルットが執務室に入って来て除隊届を出してきた。


を迎えに行くので、部隊を辞めますね」


「……サンタマリアとは?」


「僕の思い人ですよ、大切な贈り物のを、受け取ってくれれば良いけどね」


「はっ!お前みたいな使えないクズを選ぶ女なんて居るとは思えないがな!」


バンは大聖女オリヴィアと初めて会った時に「サンタマリアアクアマリンの美しい瞳を、僕だけのものにしたい」と、告白してロイドにボコボコに痛めつけられていた。

色が濃くて不純物も傷も無い最高級のアクアマリンである「サンタマリア」のように美しいと、バンは一目惚れしたのだ。


それからは、オリヴィアの事を「サンタマリア」と呼んでは、ロイドに頭をどつかれていた。


サンタマリアだと!まさか!オリヴィアの居場所が分かったのか!?


ロイドはその言葉に興奮して一瞬魔力が強くなり、ロイドに纏っている魔力が揺らいだに気付いたバンは、悪巧みを思い付いた悪戯っ子みたいな笑みを浮かべてた。


「サンタマリアは、よりも、を選ぶかもね!」


バン・ビルバルット!!貴様殺してやるぞ!!


っと、ロイドの叫び声が聞こえたかの如く、「ハハハ」と、笑いながら部屋を出ていた。


バンはオリヴィアに「まるで、尻尾を振って戯れる犬みたいだな」と、言われてから「黒犬ちゃん」と呼ばれていたのだ。つまり、「オリヴィアはロイドより僕を選ぶかもね」と、言ったのだ。


ガキのくせに俺に喧嘩を売りやがって!俺も本気を出さなきゃいけないな。


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