第47話 同じ事をするんだね
意識を飛ばしていたアンナは目を覚ますと、目隠しが外れているのに気が付いた。耳栓は着いたままで声は聞こえないが、頬に触れる温かい手に手を重ねて「ロイド」と、愛しい人の名前を呼んで目を開けると、身体の上にいるのはロイドではなく、烏の頭をした魔物だった。
「キャーーー!!!」
「………………」
耳栓で何を喋っているのか分からず「イヤーー!!」ッと、泣き叫ぶと、愛しいロイドが現れて耳栓を外した。
「煩いぞ!静かにしろ!」
「ロイド!!助けて!!魔物が!!」
「何言ってる。ずっと魔物を咥えていただろ?」
「……え?」
「そうですよ、お嬢様。今日は私がお相手しておりました」
「そ、んな……」
「っん!また、そんなに締め付けて」
「イヤ!!やめて!!助けてよロイド!!」
「煩いぞ!おいで、アンジェリーナ」
「……アンジェ、リーナ……?」
妖精族の少女がロイドの元に来ると、優しくキスをした。
「ロイドやめて!他の女とキスしないで!」
「これからは、アンジェリーナが儂の恋人だ。お前はここでポーションを作りながら、客の相手をしてろ」
そう言うと、アンナの口に白い薬を数錠押し込むと、魔法で口を塞いだ。
「これで静かになった。アンジェリーナ愛してるよ」
※
それからは昼は鎖で繋がれながらポーションを作り、夜になると媚薬と麻薬でトロトロにさせられて魔物達の相手をさせられていた。
「……なんで、私がこんな目にあうの?私はヒロインなのよ?」
「まだ、そんな事を言ってるんだね」
声が聞こえて後ろを振り向くと、開いた扉に身体をもたれかけているラウル王国第三王子クリスティン・ラウルがいた。アンナは駆け寄ろうとするも、鎖が届かずにガシャンと音を立てて尻餅をついてしまった。
「クリス!助けて!ロイドが酷い事をするの!」
「ああ、知ってるよ」
「本当に!クリス!愛してる!今すぐ私を助けて!」
「……ああ、助けてあげるよ」
アンナの元にゆっくり歩いている間に、アンナはオリヴィアを貶め事を言い始めた。
「まったく、あの女が生きてるのが、おかしかったのよ!せっかく居なくなったから、国に死亡届を出しても信じてくれないし!腹が立ったから、お茶会で会った令嬢達には、あの女が私を囮にして逃げ出して、魔物に襲われるところを、ロイド様が助けてくれた。その時に、あの女が魔物に襲われたって言ってやったわ!
そして、極悪非道な女に騙された自分が許せない、アンナが本当の運命の恋人で、真実の愛で結ばれたいって、プロポーズされたって恋物語を、小説にしたいって令嬢もいたのよ!やっぱりオリヴィアには、悪役がお似合いなのよ!」
クリスティンはアンナの首に巻いている鎖を持ち上げて吊るし上げた。足をバタつかせながら抵抗してもビクともせずに、より鎖が締まっていくだけだった。
「
「……クリ、ス?」
「あっ、あと、俺はクリスティンじゃなく、アーロンクロイツって、オリヴィアが付けてくれた、素敵な名前があるんだよ。まあ、君には呼ばせないけど」
アンナの胸元に手を当てると「パリン」と、音がして黒い煙が上がると、アンナはぐったりして意識を失った。
ベッドの上に寝かせると、壁に寄りかかり呟いた。
「バン君、ラウル国アーリン村の東側にある山に小さな小屋がある。5日後、そこに来てくれ」
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