第45話 変な気配
ルミタス帝国に届け出されたロイド・シルベスタとアンナの婚約誓約書とオリヴィアの死亡届に、皇帝ベンジャミン・レイサム・アム・ルミタスは頭を抱えていた。
受理するか会議をするのに、オリヴィアの弟子で筆頭聖女のシルフィ・カーラントと魔法部隊副総長バン・ビルバルットがベンジャミンの執務室に集まっていた。
両親を亡くし家紋も没落していて親族も居ないオリヴィアの莫大な遺産は、婚約者であるロイド・シルベスタが相続する事と、婚約誓約書に書かれていて、死亡届けを受理していまうと遺産をロイドが相続してしまう。しかも、オリヴィアの遺体は無く、アンナが「私とロイドを守る為に死んだ」との証言だけなのだ。
ベンジャミンが違和感を感じているのは、ロイドがオリヴィアを忘れている事だ。なによりアンナが「オリヴィアが目の前で死んで塵になって消えたから、ロイドは心に傷をおって忘れている」と、言っているからだ。
「あの冷血悪魔のシルベスタだぞ、魔界を消滅させたって言われた方が、信憑性があるぞ」
「そうですわ!それに、師匠が亡くなると、この指輪の聖石が砕けるのです。なのに、まだ砕けてないのですわ」
シルフィ・カーラントは左手の人差し指に着けているアクアマリンに似た少し大きな聖石を撫でながら考えていた。この指輪はオリヴィアが引きこもる時に、孤独死したらどうする!と、説得(脅しに近い)して、オリヴィアの生命力が無くなりそうになると、砕けてオリヴィアの元にシルフィを転送する魔法が施してある。だから、オリヴィアが生きていると確信している。
シルフィの隣に座っている真っ黒なローブのフードを深々と被り、紅茶に大量の砂糖とミルクを入れてかき混ぜている男が、「確かに」と言いながら紅茶をグイッと一口で飲み干した。
「僕も生きてると思う。総裁の魔力に変な気配が混ざってるし、それに、今の総裁は別人みたいだ」
「ビルバルットよ、変な気配とは?」
「う〜ん、禍々しいと言うか、気持ち悪いと言うか、それに、僕はあの気配を知ってるんだよ」
「知っているのか!?」
「知ってるんだけどね、その人の名前が思い出せないんだよ〜」
「バン、それは人の気配なのですか?」
「そうだよ!シルもベンも知ってるはずだよ」
「私とシルフィも知ってるだと?」
「うん、小さい頃に会ってる人なんだけどさ〜」
「小さい頃に
「そう!修行の時だよ!禍々しくて、ベタベタ絡み付く気持ち悪い魔力が苦手だったけど、ロイドも剣術を教わってたからさ」
「まて!シルベスタも一緒にいたのか?」
「そうだよ!だって、ロイドは兄弟子じゃん!こんなキモイ人と、よく一緒にいれるなって思ったよ!」
「バンがキモイって言ってたのって、あの人じゃないの!?」
「ブラームス・カールトンか!?」
「そうそう!カールトン師匠!あのキモイ人の気配が混ざってて、臭くてたまらないんだよ!」
「陛下!オリヴィア様の安否を、正式に調査させて下さい!」
「うむ!シルフィ・カーラントは大聖女オリヴィア・カールトンの生死の確認。バン・ビルバルットはロイド・シルベスタとアンナ嬢の調査を命ずる!」
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