第42話 神殿ではない場所

「私達の目的は、既に終わっているのです」


ガブリエルはその言葉を最後に何も答えず、ただ、歩いて行った。


オリヴィアとロイドは知らない間に何が起きていたのか不安になりながらも、弟のように可愛がっていたガブリエルとアーロンクロイツが一緒に、自分達に言えない何かを背負っているのではと、心配に思っていた。


暫く歩いて廊下のつきあたりまで来てガブリエルが壁に手を触れると、オリヴィアは空間が歪んだ気配を感じた。


「……結界か?」


「そうです。私とアーロンクロイツ様の魔力にしか反応しません。この結界の中は異空間になっていて、そこに教誨堂があります」


「そうか、……そこにアーロンがいるのね」


「ええ、それでは参りましょう」


ガブリエルが壁に向かって歩くと、吸い込まれるように消えていった。その後にロイドがオリヴィアを守るように肩を抱きながらが結界の中に入っていくと、木造の建物には光が差し込む窓が無くて、通路に点在している小さな魔石が放っている赤い光しか灯りがなく、光が差し込み明るかった神殿から薄暗い場所に来たため視界を奪われたが、オリヴィアほ直ぐに視界を取り戻して周りを見渡すと違和感を覚えて顔を顰めた。


長く何処までも続きそうな通路に、両サイドの壁からは黒い扉が威圧感を放っていて、点在している魔石の赤い光で異様さが増している。


オリヴィアはこの場所に見覚えがあった。


私、ここに来た事あるわ……。


「……ガブリエル。ここは神殿じゃないだろ?」


「直ぐに気付かれるとは、流石はオリヴィア様です」


「……ここは、魔界か?」


「はい、魔界です」


「貴様!俺達を魔界に連れて来たというのか!?」


ロイドは「魔界」と言う言葉に怒り狂い、ガブリエルに剣を向けた。


「ガブリエル…、ここは、長老院の館だね?」


「オリヴィア様には隠せないですね、長老院の誰かも分かっているのでしょうね?」


「叡智を司る大悪魔アトバシュの館だろ?」


「はい、アトバシュ様の館でこざいます。そして、こちらの部屋でお待ちです」


ガブリエルが左側の壁の扉を開けると、窓もベッドも何も無い部屋には、白い拘束衣を着て椅子に縛り付けられているアンナの左側にアーロンクロイツと、右側にはこの世の者とは思えない美しい男がいた。


「久し振りだね、オリヴィア。会いたかったよ」


「私は会いたくなかったよ、アトバシュ……」

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